研究課題/領域番号 |
23740315
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
藤井 修治 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (40401781)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 共連結構造 / 二分子膜 / スポンジ相 / レオロジー / 構造転移 |
研究概要 |
両親媒性分子が形成するニ分子膜は、ある温度・濃度の条件下において3次元的共連結構造を形成する。この共連結構造は、周期性をもつキュービック相や、周期性をもたないスポンジ相の2種類に分類される。これらの共連結構造においてはニ分子膜が応力を支えるため、ニ分子膜の欠陥形成や形態変化はレオロジー特性に顕著な影響を及ぼす。ところが、そのレオロジー特性はニ分子膜の構造変化の観点から議論されてはいない。本研究ではニ分子膜共連結構造であるスポンジ相に着目し、構造変化とレオロジー挙動との相関を明らかにすることを目的とした。まず、(i) 流動下において二分子膜のゆらぎに関する動的情報を得るために、マイクロレオロジー測定用の流動拡散波分光装置(DWS)の改良とRheo-DWSの構築を行った。自作の拡散波分光装置に平行平板ガラスからなる流動セルシステムを組み込んだ。次に(ii) AOT/Brine/H2O三成分系の相図作成を行い、イオン性界面活性剤AOTのスポンジ相領域を明確にした。相図はAOT濃度、塩濃度、温度を変えて作成した。温度範囲20℃から25℃の範囲で低温側から順にラメラ/スポンジ共存相、スポンジ相、スポンジ/ミセル共存相を確認した。AOT系について得た相図を基にレオロジー測定を行い、AOT濃度が増すに連れて、低ずり速度領域におけるシアシニング挙動が顕著となるが、高ずり速度域ではニュートニアンへとレオロジー挙動が変化することを明らかにした。このレオロジー挙動における変化は二分子膜の構造変化と密に関連すると考えられる。また非イオン性界面活性剤C10E3系のスポンジ相を用い、不純物添加による二分子膜のダイナミクスへの影響を調べるために、C10E3/PEO/水系、C10E3/Glucose/水系、C10E3/Pluronic/水系のそれぞれについて相図作成を行い、スポンジ相領域を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流動下における動的光散乱測定、および、拡散波分光測定を可能にするために、流動セルを散乱装置に取り付けた。また、光散乱測定では精密な温度制御が必要であり、そのためにペルチェ素子を利用したサーモスタットを光散乱装置に取り付けた。これら2点の装置改良において新たに部品を設計し直す必要があり、研究計画の遅れの原因となったが、すでに相図など実験遂行上不可欠な情報は得られているため致命的な遅れではなく、今年度で実験遂行し挽回することは十分可能である。
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今後の研究の推進方策 |
AOT系スポンジ相について、AOT濃度を変えた試料を用い流動下における小角X線散乱測定(Rheo-SAXS)を行い、二分子膜の配向状態とシアシニング/ニュートニアン変化の相関を明らかにする。同時に拡散波分光測定(DWS)によるマイクロレオロジー測定をすすめる。さらにRheo-DWS測定により流動下において二分子膜のマイクロレオロジー挙動がどのように影響されるのか調べる。特に、二分子膜のなみうち揺らぎと流動場との動的結合に着目し、揺らぎ抑制とレオロジー特性との相関を明らかにする。同様のRheo-SAXS測定、DWS測定を、(1)リン脂質DMPG系、(2)非イオン性界面活性剤C10E3+不純物混合系についても行い、二分子膜系のレオロジー挙動における普遍性の存在を議論する。リン脂質DMPG系では、二分子膜のゲル化を利用して膜の弾性特性、膜内粘度を系統的に制御しつつ実験を行うことで、膜の弾性特性の観点からレオロジー挙動を整理する。そして、非イオン性界面活性剤C10E3+不純物系では、溶媒粘度を制御する。これらの実験結果をまとめることにより、膜と溶媒とのレオロジー特性の対称性の観点から二分子膜系のレオロジー挙動を系統的にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に化学薬品類(試料代)として使用する。リン脂質は高価でありレオロジー測定やDWS測定を行うために一定量の試料が必要である。またDWS測定には単分散ポリスチレンラテックス微粒子が必須であり、十分な実験量を確保するために薬品類として合計90万円を計上する予定である。また8月にレオロジー分野で最大の国際会議であるInternational Congress on Rheology、日本物理学会や日本レオロジー学会などの国内会議において研究成果報告を行うための旅費として使用する。海外、国内旅費として合計50万円を計上する予定である。その他、ガラス器具類や、試料調整用の窒素ガスなど、消耗品費として20万円を計上する予定である。これらの合計はH24年度の直接経費160万円である。
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