研究課題/領域番号 |
23740317
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
義永 那津人 東北大学, ・原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (90548835)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 非線形非平衡物理 / 生物物理 / 流体力学 / ドリフト分岐 / マランゴニ効果 |
研究概要 |
本研究は、(a)細胞の内部構造、(b)不均一な表面張力下での流れ場と液滴の運動1と変形、を二つの軸にしてそれらの間を埋めていくことを目的としている。本年度は、(a)に関しては、細胞が外部の環境に適応して生み出す力を変化させるrigidity sensingという現象が、生化学的な特異性でなく力学的な一般論として起こりうることを示した。これはBiophysical Journal誌のLetterとして掲載済みである。(b)に関しては、液滴の内部反応によるパターンの変化によって運動する液滴のモデルを理論的に提案しモデル実験においてその正当性を確かめた。これはPhysical Review E誌のRapid Communicationに掲載されている。また、化学反応によって、外部から非対称性を一切導入することなく、自発的な運動を実現することができることを示した。この内容はJournal of Chemical Physics誌に掲載済みである。これらの論文は、上記の細胞レベルの記述とモデル系との記述との橋渡しになる大きな一歩であると考えている。実際、細胞では、アクチンと呼ばれるフィラメント状の分子がその力学を担保しており、関連するタンパク質群の分布の変化が運動と相関している。現時点では化学反応を用いたものであり生物からは大きく離れているが、生物を普遍的に理解するには、システムを抽象化することが不可欠であり、その第一段階として大きな進展であった。液滴の自発運動については、本研究計画の後半で計画している数値計算のために有用なPhase Fieldモデルという、界面を滑らかにことによって自由境界を扱いやすくするモデルについても解析的な内容も含んでいる。本研究では、ある極限で従来から知られた結果をきちんと再現するモデルを提案することに成功しているという点で非常に重要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の前半は予想以上に研究が進展し、研究計画の二つの軸に対してそれぞれ、論文を一報と二報掲載することに成功している。また、さらに論文を三報投稿済みであり、来年度には掲載させると期待している。このような計画以上の進展の中、後半は代表者の異動があったため少し前半のような進展が難しかったため、年間を通してはおおむね計画通りであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的にはこれからも当初の研究計画通りに進めていく。本年度は数値計算が十分に行えなかったが、異動後の環境も整い、さらに新しい環境で今まで以上の計算機を使用できる予定であるので、これからは数値計算も含めて研究を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画通り、次年度はこれまでの理論的研究を進めながら、数値計算にも力を入れていく予定である。そのために計算機の導入を考えている。また、今年度の研究の進展に合わせて成果発表もこれまで以上に行っていきたい。国内、海外の様々な分野の学会や研究会に参加して成果を公表するとともに、今後の研究の発展のための情報収集を行っていきたい。
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