我々は近年注目が高まっている異方的微粒子(コロイド粒子)系の中で、「両親媒性コロイド粒子分散系」における凝集構造の形成及びその機構の解明を目的とし、研究を行なっている。特に本研究では、このような系は熱揺動での平衡化が困難であるため、強い非熱的揺動(超音波)を加えることにより平衡構造を形成した。 最終年度までに、以下の成果を得た:(i)金属蒸着による両親媒性ヤヌス粒子の作成及び斜め蒸着によるヤヌス形状の制御に成功した。(ii)粒子の一部をパラフィンでマスクすることによる両親媒性ヤヌス粒子の作成に成功した。(iii)(i)の粒子を用い、水-油-両親媒性粒子3成分系に超音波印加することにより、界面活性剤分子系と同様の凝集構造を形成することに成功した。 最終年度には、以下の成果を得た:(iv)(iii)の研究を進め、凝集構造の変化及び構造形成の物理的機構を解明した。(v)ヤヌス粒子を用いた金属粒子の誘電体被覆に成功した。この実験では、両親媒性の機構を発展させ、金属間・非金属間のファンデルワールス力の違いを利用することにより、2次元分散系において金属微粒子をヤヌス粒子で被覆した。これは極めて凝集しやすい金属粒子を"エマルション化"することにより分散安定化できる可能性を示したものといえる。 以上の研究により、「メソ界面活性粒子」である両親媒性ヤヌス粒子特有の性質を解明することに成功した。これはこの粒子系の界面活性作用などの活用に資するだけでなく、近年特に注目されている「パッチ粒子系」の自己組織化機構の一端を解明したものとしても意義がある。また当初の計画を変更し、ヤヌス粒子を用いた金属粒子の誘電体被覆にも取り組み、成功した。これは固体粒子界面活性剤であるヤヌス粒子特有の構造であり、新規なメソ複合構造作成手法としても意義がある。
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