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2011 年度 実施状況報告書

分子動力学計算による蛋白質水和水の水素結合組換えメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23740321
研究機関独立行政法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

米谷 佳晃  独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究職 (80399419)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード生体分子 / タンパク質 / 水 / 水素結合 / 分子動力学計算
研究概要

水和水の水素結合の組換えは、溶液中の化学反応など化学現象だけでなく、生命現象も含めた多くの動的分子過程における基本過程である。水和水の水素結合組換えは、生体分子の構造変化に必須であり、分子会合や蛋白質のフォールディングの律促段階に関係していることが知られている。従って、水和水の水素結合組換えを分子レベルで捉えることができれば、様々な生命現象の分子論的理解につながる。これまで、時間分解蛍光分光、NMR、中性子非弾性散乱、テラヘルツ分光などにより生体分子の動的水和特性が測定され、バルク水と異なるタイムスケールで運動していることなどが示されてきた。しかし、このような測定手法では、水和水全体の振舞いを捉えることはできても、個々の水分子の動きまで知ることはできない。そのため、本研究課題では、分子動力学計算を用いて生体分子水和水の水素結合の組換えメカニズムを原子レベルで捉えることを目的とした。 生体分子水和水の水素結合タイプは多様である。今年度は、その中から対象を1つ(水分子の2つの水素原子が、それぞれ生体分子の異なるアクセプタ原子と水素結合するタイプ)に絞って調査し、その水素結合組み換えメカニズムを明らかにした。このタイプの水素結合では、組換えに多重水素結合が関係する。水素結合の組換えは、多重水素結合が形成された時に起こり、その頻度は、多重水素結合の出現率と水和サイトの構造揺らぎに依存することがわかった。この結果は、生体分子水和水の多様なダイナミクスを系統的に解析していく上で基盤となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の目的は、分子動力学計算により、生体分子水和水の水素結合組換えメカニズムを明らかにすることである。今年度は、1つのタイプの水素結合について、その組換えメカニズムを解明することができた。順調に進展していると考える。 導いた水素結合の組換えメカニズムの詳細は次のようなものである。注目している水分子が生体分子表面に滞在している際、まれに別の水分子がやってくる。この水分子が同時に同じ場所に水素結合を作ると(多重水素結合)、水素結合の組換えが進む。また、この組換えの起こりやすさは、水和サイトの構造揺らぎによって決まることもわかった。この結果は、水和水の多様なダイナミクスを詳細に解析していく上で基本原理となり、本年度、それを捉えることができたことは重要である。 また、誌上発表、口頭発表(国内、国外)を行うなど、成果発表についても予定どおり進めることができた。

今後の研究の推進方策

生体分子水和水の水素結合タイプは多様である。今年度は、1つのタイプについて水素結合組換えメカニズムを解明した。今後は、多様な水素結合タイプを、結合様式に基づいて整理しながら、それぞれの組換えメカニズムを系統的に解明していく。 具体的な推進方策は次の通りである。まず、水分子との水素結合様式に基づいて、生体分子表面の水和サイトを分類する。次に、各サイトごとに、関与している水素結合の時間変化、ライフタイム、パスウェイを求める。同時に、多重水素結合の有無、構造揺らぎを評価し、これらを比較検討し、水素結合組換えメカニズムの特徴を系統的に整理していく。水素結合のライフタイムは、時間相関関数を使って計算する。また、極性サイトだけでなく、非極性サイトについても同様に解析を進める予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成23年度交付額のうち、海外出張、論文発表等の費用が予定していたより少額に抑えられ、320千円の次年度使用額が生じた。次年度の研究費は、これも合わせて、計算機の購入、成果発表等に使用する予定である。計算機は、分子動力学計算及び解析に利用する。これに、500-1000千円程度使用する予定である。研究成果を広く普及させるため、国内、海外の会議で成果発表を行う。その出張旅費に500千円程度使用する予定である。また論文の出版費に10-20千円程度利用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] What determines water-bridge lifetimes at the surface of DNA? Insight from systematic molecular dynamics analysis of water kinetics for various DNA sequences2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Yonetani, H. Kono
    • 雑誌名

      Biophysical Chemistry

      巻: vol. 160 ページ: 54-61

    • 査読あり
  • [学会発表] What determines water-bridge lifetimes at the surface of biomolecules?2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Yonetani, H. Kono
    • 学会等名
      Berkeley Mini Statistical Mechanics Meeting
    • 発表場所
      カリフォルニア大学バークレー(米国)
    • 年月日
      2012年1月13日
  • [学会発表] 生体高分子表面における水分子の滞在時間を決める要素について2011

    • 著者名/発表者名
      米谷佳晃、河野秀俊
    • 学会等名
      日本生物物理学会第48回年会
    • 発表場所
      兵庫県立大学(姫路)
    • 年月日
      2011年9月17日
  • [学会発表] 生体分子表面における水分子の滞在時間を決める要素について2011

    • 著者名/発表者名
      米谷佳晃、河野秀俊
    • 学会等名
      第25回分子シミュレーション討論会
    • 発表場所
      東京工業大学(東京)
    • 年月日
      2011年12月7日

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公開日: 2013-07-10  

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