研究課題/領域番号 |
23740325
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設) |
研究代表者 |
奥村 久士 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 計算科学研究センター, 准教授 (80360337)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 分子動力学法 / シミュレーション / タンパク質 / ペプチド |
研究概要 |
レプリカ交換法やファンデルワールスレプリカ交換法はサンプリング効率が高く注目されているが,それでも50残基以上のタンパク質を折りたたむのには成功していない.それはどちらの手法も特定の構造に近づくようにシミュレーションするわけではなく,ただ多くの構造をサンプルするだけだからである.そこで今年度は狙った構造に近づくように力をかける新しい手法「αへリックス・βストランドレプリカ交換法」を考案し,そのシミュレーションを実行できるプログラムを完成させた。一般的にタンパク質はアミノ酸の2面角φとψがφ=-60°,ψ=-60°程度だとαへリックス構造をとり,φ=-120°,ψ= 0°程度だとβストランド構造をとる.そこでαへリックス・βストランドレプリカ交換法ではαへリックス構造やβストランド構造を取りやすい(φ,ψ)の値の周辺にバイアスポテンシャル(アンブレラポテンシャル)をかける.バイアスポテンシャルはレプリカごとに異なるように設定し,その強さを表すパラメータを交換する.こうしてαへリックス構造やβストランド構造に近づくようにシミュレーションできる. さらに今年度はαへリックス構造とβストランド構造の両方が共存することが知られている18残基のデザインペプチドにこの手法を応用した.その結果,この手法はこれまでレプリカ交換法よりも多くの構造を効率的にサンプルできるようになることがわかった.現在,αへリックス-βストランド間の構造転移がどのように起きるのか調べている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,「αへリックス・βストランドレプリカ交換法」のプログラムを完成させることができた.また18残基のデザインペプチドに応用して,この手法の有用性がわかった.これらのことからおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこのデザインペプチドのαへリックス-βストランド間の構造転移がどのように起きるのか解析する.また,より大きい系に適用できるようにするため,プログラムの高速化に取り組む.そのための新しい手法を考案しているところである.高速化されたら,56残基のタンパク質,プロテインGに応用する.これはでαへリックス構造とβストランド構造の両方を持っている.このシミュレーションを全原子モデルでおこない,ほどけたアンフォールド状態から天然構造へどのように折りたたむのかその機構を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に旅費に使う.日本物理学会で2回,日本生物物理学会、日本蛋白質科学会,分子シミュレーション討論会で各1回,研究成果を発表するために使用する.国内の学会に参加するとともに国際会議にも参加して研究成果を発表する.今年度はロシア,台湾,インドの国際会議で講演する予定である.さらに台湾中央研究院Chin-kun Hu教授と研究打合せをするために1週間程度台湾に滞在する.
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