研究課題/領域番号 |
23740326
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷川 享行 北海道大学, 低温科学研究所, 博士研究員 (30422554)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 衛星 / 数値シミュレーション / 流体計算 / 軌道計算 / 惑星 |
研究概要 |
本研究における目的は、ガス惑星形成時に惑星周囲に存在し衛星系形成の母体となったと考えられている周惑星円盤の構造を明らかにし、衛星系形成過程の基礎を確立することである。その衛星系の材料物質は固体であるが、太陽系形成の母体である原始惑星系円盤において物質のほとんどは水素・ヘリウムなどの気体であり、固体の運動はその気体に大きな影響を受ける。そのため、この目的の遂行するための基盤的研究として、まず高解像度数値流体計算を行い、気体の構造、すなわち原始惑星系円盤ガスが周惑星円盤へ降着する様子を詳細に理解することが必要である。平成23年度において、そのテーマについて詳細に研究を行い、周惑星円盤の形成過程について新たな知見を得た。具体的には、(1)周惑星円盤へ降着するガスが原始惑星系円盤のどの位置・高さから来ているかを明らかにした。(2)周惑星円盤外縁部は、円盤中のガスが惑星重力圏から徐々に流出していることを明らかにした。(3)周惑星円盤へのガスの降着フラックス分布を数値流体計算により求められた。これは、周惑星円盤のガス面密度進化を求めるための基礎となる。以上により得られた円盤ガス構造を用いることで、衛星材料物質である固体の運動を調べることが初めて可能となる。本研究内容は、国際専門誌 Astrophysical Journal へ投稿し、既に受理・掲載されている (Tanigawa, Ohtsuki, and Machida 2012, ApJ, 747, 47)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は主に、原始惑星系円盤から周惑星円盤に固体が突入してきたときにどのように捕獲されるかについて研究を行う予定となっていた。しかし、その前提となる周惑星円盤ガスの構造について、当初想定していなかった現象が見えていたため、それについての解明を優先させた。その結果、周惑星円盤の形成過程や構造について新たな知見が得られた一方で、固体の運動について当該年度中に成果を上げることができなかった。ただし、固体の運動をシミュレーションするための数値計算コードは既に完成しており、テスト計算も始めつつある状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた周惑星円盤の構造を用いて、固体が周惑星円盤とのガス抵抗により捕獲される機構についての研究を開始する予定である。Tanigawa and Ohtsuki 2010 (Icarus, 205, 658) の成果を得る過程で得られた微惑星軌道の解析的・統計的取り扱いに関する知見を生かし、まずは解析的なアプローチで固体の捕獲率を見積もる。その後、直接軌道計算を用いて固体が周惑星円盤に捕獲される様子を理解する。特に、捕獲された結果、周惑星円盤中の固体がどのような分布になるかを明らかにする。また、ガス円盤構造自体については当初予定していた最低限の理解は得られたが、さらに調べるべき課題が存在しているため、引き続き高精度数値流体計算を用いてガス円盤構造の理解も深めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、研究打ち合わせや成果発表のための旅費として使用する。また論文投稿料にも使用する予定である。なお、23年度未使用額の発生理由についてだが、共同研究者が当該研究の推進のために国立天文台の大型計算機を利用したため、当基金からの支出を予定してた論文投稿料を国立天文台から支出してもらえることになったことが主な要因である。未使用額の24年度での使用予定は、研究成果発表のための出張旅費に充てるつもりである。
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