地震は活断層において繰り返し発生する。活断層近傍における構造の調査から、断層運動前の短中期的な物理現象を理解し、地震発生サイクルにおける時間的位置づけを明らかにすることを目指した研究を行う。本研究では近い将来中規模地震の発生が考えられる山崎断層帯(兵庫県)を研究の対象とし、特に自動車道からの人工ノイズ(トラフィックノイズ)を用い、地震波干渉法を利用して断層の構造を探査することを目的とする。 山崎断層系の一つであり左横ずれ成分を伴う安富断層の一部直上を、中国自動車道が通っている。その地下数mで断層を水平に貫く安富観測抗内を中心に、観測を行った。設置した機材は、固有周期2秒の三成分速度型地震計であり、1 kHzサンプリングでトラフィックノイズを記録した。昨年度は、観測抗から数100 m内にある2つのトンネルも利用して、自動車道と安富断層の走向に沿う方向の測線でトラフィックノイズの観測を行い、表面波の伝播の抽出を行った。本年度は鉛直方向に伝播する波を抽出する目的で、観測抗内のみに6台の地震計を5 m間隔で直線状に設置し、トラフィックノイズの観測を行った。尚この際、観測を通じて見つかった、観測機器固有の記録時の問題を解決した。2か月間の連続観測記録を、地震波干渉法を用いて解析を行った結果、任意の地震計を疑似震動源とし、他の地震計をそれに対する観測点として伝わる波の抽出に成功した。以上の様な波の伝播の抽出に成功したことは、断層地下浅部構造の推定が可能であることを意味している。
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