最終年度の実績:自転する磁気流体球内に、適当なトロイダル磁場および地衡流を仮定する。粘性と慣性とを無視する磁気地衡流近似のもとで、それら基本場からの擾乱がどう時間発展するかを、線形安定解析によって求め、磁気不安定現象とそこで生じる波について考察した。印加する磁場強度をあらわす無次元数であるエルサッサ数が数十程度になると、系は不安定になるが、その線形成長率は概して小さく、磁場擾乱はゆっくりと東方に移動する(resistive不安定)。いっぽうエルサッサ数を100程度にすると、成長率は大きく、磁場のパターンは比較的速く西方に移動する(ideal不安定)。地衡流を加えると、一般に系はより不安定になる。またトロイダル磁場を赤道付近に局在化させても、系はより不安定になる。大きいエルサッサ数で起こるideal不安定は、地磁気西方移動との関連で興味深い現象であるが、なかなか固有値が収束しない問題があり、現象の物理的解釈にまだ至っていない。 期間全体の実績:まず地球のコア対流と地磁気生成のシミュレーションを、低粘性で自転の効果が大きいパラメータ領域での、高解像度の大規模数値計算で実施し、地磁気西方移動やねじれ振動がどのように再現されるかを調べた。ねじれ振動の伝搬は理論で予想されるアルベン波速度で説明でき、数値計算結果が、地球で予想される磁気地衡流状態にかなり近いことを裏づけた。西方移動はおおまかには西向きの帯状流による移流の効果で説明できるが、波数ごとの位相速度の違い(分散性)もみられた。このことを理解するための基礎的な実験として、磁気地衡流近似での磁気不安定の定式化をおこない、計算コードを新たにつくった。前記のような問題がまだあるが、現在理解できている範囲内で、早急に結果をまとめるべく、努力している。
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