研究課題/領域番号 |
23740336
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
生田 領野 静岡大学, 理学部, 助教 (60377984)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | GPS / スロースリップ / 固着 / 遷移域 / 南海トラフ / プレート境界 |
研究概要 |
本研究の目的は,東海地方において沈み込むプレート境界面上で強い地震波を出す場所(アスペリティ)の詳細な分布を明らかにすることである.そのためには,沈み込みの進行に伴う固着の分布の時間変化を調べ,常に固着している固着域(=アスペリティ)・定常的なすべり域・固着が変化する遷移域の区分をする必要がある.このために地表のGPSによる変位記録からプレート境界での固着の分布,さらにその時間変化を推定する.下記3つの要素を組み合せて手法の開発を行った.1.気象要素などによる短周期のノイズの除去.2.年毎の地表変位速度に適切な制約条件を導入した固着の空間分布の推定.3.固着の空間分布の時間変化による,固着域と変動域の分離.本年度の直前にMw9.0の東北地方太平洋沖地震が発生したため,この地震の前の地殻変動にこの手法を適用し,本手法の妥当性を検証した.結果,東北地方太平洋沖地震前15年間にわたり,東北地方太平洋沖地震でもっとも大きくプレート境界が滑った部分を中心に,ごく小さな領域でのみプレート間固着が認められ,その他の部分は大きく時間変化していたことが明らかになった.東海地方でも同じ手法を適用することが可能である.更に東海地方を始めとする南海トラフ沿いのプレート境界では,固着域深部の遷移域で短期的スロースリップが発生していることがわかっているため,GPSデータから短期的スロースリップを自動で検出するアルゴリズムの開発を行った.この部分は当初24年度に行うとしていたが,研究の進捗が予定より早かったために取り組んだ.結果,傾斜計,高感度地震計で検出された短期的スロースリップのうち70%程度がGPSでも検出された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は地表のGPSの記録からプレート境界での固着の分布,その時間変化を推定するものである.この点では充分に固着とその時間変化を推定することができている.年度で言えばH24年度実施予定だった,長期/短期の時間変化推定の一部に既に取りかかれており,この点では順調以上である.しかしH23年度実施予定であったGPSデータ解析は進められず,こちらはH24年度に行う予定である.このような理由で±0,概ね順調である.
|
今後の研究の推進方策 |
ほぼ申請書通りに行う予定である.1.目標である固着の時空間分布の推定の一歩として,短期スロースリップの誤検出を抑え,かつ検出率は100%に近づけるようアルゴリズムのチューニングを行う.2.短期と長期の変化を統合する.以上の処理結果から様々な時間スケールの変動を抽出する.最終的には長期と様々な短期の時間変化を重ね合わせてプレート境界上の固着分布の長短の時間変化を示すアニメーションが得られる.これが本研究の最終的なプロダクトである.最後に23年度と24年度前半で得られた成果をとりまとめ,成果の発表を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は学術研究助成基金助成金(若手B)の継続採用が決まっている.また23年度使用残額が約33万円発生している.この主な理由は,国内旅費に関して学会参加費用が不要であったこと(予定していた発表を行わなかった),学生に研究補助を行ってもらう予定が学生の確保が難しく,時間数が少なかったことである.これらについては,一部データ回収用PC購入(20万円)に当て,また一部は研究補助謝金(13万円)に宛てる予定である.次年度についてはデータ解析ソフト12万,国内旅費30万/海外旅費35万円の使用予定で,データ解析ソフトはなるべく早い時期に購入して本解析に有効に活用したい.
|