研究課題/領域番号 |
23740337
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 武男 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (40377982)
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キーワード | MCMC / GPU / 地震 / インバージョン |
研究概要 |
MCMC法は観測データとモデルパラメータを結び付けるGREEN関数が非線形な関係を持つ観測方程式系の問題の場合でも効率的に解く事ができる手法の一つである.また,最小二乗法では劣決定問題を解くことは出来ないが,MCMC法では逆行列を生成しないため,不定のパラメータがどこに配置されているのかを含めて解くことができる.本研究ではMCMC法を用いて,多くの応用例を構築して,この手法の有効性と更なる計算効率の向上を目指している.本年度ではMCMC法を用いてインドネシアのスマトラ島北部で発生したM6クラスの2つの地震について解析を実施した.今回解析したM6クラスの2つの地震は名古屋大学がスマトラ島北部に構築しているGPS観測網内で発生した.そのスマトラ島北部のGPS観測網で観測されM6クラスの2つの地震によって生じた地殻変動データを基に地震のメカニズム解と震源の位置を推定した.地震のメカニズム解は地震波形から決定することができるが,共役断層面のどちらで地震が発生したのかを区別することは出来ない.しかしながら,近傍に設置されたGPS観測網では共役断層面のどちらで地震が発生したのかを推定する事ができる.このような地震時の観測データに対して,MCMC法を用いることで,不確定にしか決まらないパラメータ群を区別する事ができる.また,最小二乗法等では推定されたパラメータ群の推定誤差はガウス型であるが,MCMC法は推定されたパラメータ群は確率密度関数として表現されるためより詳細な議論が可能になることが確認できた.また,推定された断層面はスマトラ断層に対して,共役断層系の一部で地震が発生と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
名古屋大学が構築しているスマトラ島北部のGPS観測網内でM6クラスの地震が発生したため,当初予定していた2011年東北沖地震の余効変動に伴う余効すべりの時空間分布をMCMC法で推定するまでにはいたらず,最小二乗法的な手法による推定にとどまった.この解析により,粘弾性応答を考慮した余効すべりの時空間分布を推定した.その一方で,地殻変動観測に基づく地震のメカニズム解をMCMC法を用いて推定する手法を開発し,確率密度分布としてパラメータを推定するなど,MCMC法の応用例を増やすことができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であるので,現在まで学会等で発表してきた,スマトラ島北部のGPS観測網で捉えたM6クラスの地震のMCMC法による解析結果を国際誌に投稿することを行う.また,計算プログラムを公開できるように整理を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は海外渡航を予定していたが,先方の予定が合わず,海外渡航を見送ることにした.そのため,繰越金が発生した. 今年度は海外渡航を予定しており,前年度の繰越金分については海外渡航に使用する予定である.また,本年度は最終年度であるため,研究の成果を国際誌に投稿するため,助成金を投稿料に使用する予定である.
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