研究課題/領域番号 |
23740339
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
GREAUX Steeve 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, グローバルCOE研究員 (90543166)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ザクロ石 / 超音波弾性波速度測定 / 高圧 / 高温 / マントル遷移層 / 大陸地殻 / 沈み込みスラブ |
研究概要 |
pyropeの状態方程式・弾性波速度測定を,放射光施設(SPring-8: 兵庫,APS:シカゴ)において超音波弾性波速度測定装置を備えたマルチアンビル超高圧発生装置(MA)を用いて行った.測定試料の出発物質は,愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)設置の高温炉で合成したガーネット主要端成分の混合ガラスである.出発物質をGRC設置のMAで高温焼結させ,andradite, pyropeの多結晶体の合成に成功した.この方法では高融点のクロム含有ガーネットは合成出来なかったため,酸化物混合体を用いた方法でuvarovite, knorringiteを合成した.ただし,得られた試料は多結晶体ではないため超音波測定に適せず,筑波のPhoton Factoryでその場X線回折を用いた状態方程式決定を行った. 多結晶体高温合成・超音波測定用の試料作成のためのセル構成改良は順調であった.現在のセル構成は,温度勾配を抑制するための断熱材で囲った金属ヒーターを用いる所に特長がある.この構成により円筒形・均質な多結晶体を安定に再現性良く合成できるようになった.超音波測定用の試料合成には高温安定性を高めた高圧セルを開発した.超音波測定実験範囲を24万気圧・1700 Kまで広げることに成功し,マントル遷移層最下部条件下での実験が可能になった. これらの手法を用い,Al含有stishoviteやK-hollanditeの高温高圧下弾性波速度測定も行った.これらは沈み込むスラブの大陸地殻の主要鉱物であり結果を現在解析中である.pyropeの物性測定結果は先行研究と良く一致し,低圧・高温のMA実験と高圧・常温のダイヤモンドアンビル実験の両者の結果を調和的につなぐものであった.今回得られた沈み込みスラブの地殻物質の弾性特性は,マントル遷移層で観測されている地震波速度の変化の解釈に有用である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の若干の進捗遅れの理由は,高温高圧下での弾性波速度測定に適した様々な組成を持つ多結晶体ガーネット試料(10ミクロン程度の均質細粒結晶集合体かつ低空隙率)の安定合成の困難さによる.しかし,実験技術の開発は順調であり,almandine, andradite, majoriteに対する物性測定実験は本年度中に達成可能である.また,より高圧領域(27万気圧)下で実験可能な高圧セルの開発も進んでおり,majoriteのマントル遷移層最下部条件下での物性測定も行える状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
almandine, andraditeに対する,24万気圧・1700Kの高温高圧下での弾性波速度測定実験を本年5, 6月にSPring-8において行う.また,高純度のmajoriteの多結晶体合成も推進する.SPring-8の本年度後期のビームタイム申請も行い本研究課題の完遂を目指す.より高温高圧下での超音波弾性波速度測定に適したセル開発も行い,アメリカシカゴの放射光施設(APS)で実験する予定である.この実験では,27万気圧・2000Kでのその場観察が可能と見込んでいる.これらの成果は,本年5月の日本地球惑星科学連合大会(千葉),8月のAOGS meeting(シンガポール),12月のAGU meeting(サンフランシスコ)などで発表するとともに,国際誌に投稿する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に購入・使用予定の白金るつぼが,より安価な白金カプセルで代用出来た.また,SPring-8とAPSの実験準備のためAGU meetingへ参加できなかった.それら持越し分を合算した24年度の使用計画は以下の通りである.1) 実験試料合成に必要なアンビル・器具,弾性波測定セル用のパーツなどの消耗品,2) 放射光施設(SPring-8,APSなど)での実験旅費・使用料,3) 成果報告のための学会参加費・旅費(千葉,シンガポール,サンフランシスコ),国際誌への論文投稿・別刷りなど.
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