研究概要 |
システムに利用する最適な試料サイズを決定するための試験を行った.テスト試料としては,通常の古地磁気測定用1インチ径火山岩試料から 3 mm 径, 4 mm 径, 5 mm 径かつ高さ 1-2 mm の円盤状試料を切り出した.繰り返し実験の結果,4 mm 径, 5 mm 径の試料ではマイクロ波の吸収が鈍いのに対し,3 mm 径の試料では効率よくマイクロ波が吸収されることが判明した.システムに利用する試料サイズとしては,3 mm 径が最適であると結論した. システムに,入力マイクロ波を中強度にまで増幅可能な固体パワーアンプを導入した.この導入により,1 W 程度までのマイクロ波入力を利用した試験が可能になった. 3 mm 径の試料を用いて,弱~中強度のマイクロ波による部分消磁実験を行った.試料には,実験室に既設置の交流消磁装置を用いて直流磁場50μT・交流磁場180mTによる非履歴性残留磁化を与え,マイクロ波の作用によりこの残留磁化がどの程度消磁されるかを測定した.弱強度(約20mW)のマイクロ波では,残留磁化の減少は約2パーセントであり,有意に部分消磁がなされたとは判断できなかった.一方,中強度(約1.2W)のマイクロ波では,残留磁化の減少は約10パーセントにのぼり,有意に部分消磁を行うことができたと判断された. システムの試験に利用を検討している火山岩試料についての共同研究を行うため,中国科学院地質・地球物理研究所の古地磁気学研究室を訪問して打ち合わせを行った.先方では,通常加熱によるテリエ法実験のほか,各種岩石磁気実験を行うこととなった.
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