研究課題/領域番号 |
23740343
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研究機関 | 会津大学 |
研究代表者 |
本田 親寿 会津大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40435805)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | クレーター生成率関数 / クレーターサイズ頻度分布 / 二次クレーター / クラスター分析 |
研究概要 |
岩石サンプルを得ることが難しい地球外惑星の天体表面について、その形成年代を推定する主な手法にクレーター年代学がある。1970年代以前にアメリカ主導で行われた月探査によって得られた限られた岩石サンプルの放射年代測定による絶対形成年代と、その採取場所のクレーターサイズ頻度分布との相関関係を表すクレーター生成率関数が1980年代に作成された。この1980年代に推定されたクレーター生成率関数を利用してクレーターの数密度を利用したクレーター年代学が最新の惑星探査データにも適用され研究が行われている。2000年代以降、クレーターサイズ頻度分布の解釈について研究者間で二次クレーターの影響が改めて議論されるようになった(1960年代に最初の指摘があった)。二次クレーターとは衝突天体の月面衝突後に飛び出した放出物によって形成される二次的なクレーターのことを指しており、この二次クレーターが普通のクレーターの混在することによるクレーター年代学への影響が無視できない。本研究では、この形状だけでは識別できない二次クレーターを空間分布の偏りという特徴を利用して客観的に取り除く手法の開発を平成23年度に実施した。手法の手順は次の通りである。1、研究者によって手動で抽出されたクレーターの位置と直径の情報を元に、最短距離法によるクラスター分析を行う。2、理想的なランダム空間分布を示すクレーターをシミュレーションにより数100から数1000回作成し、1と同じく最短距離法によるクラスター分析を実施し、その結果の平均と標準偏差を求める。3、1と2を比較し、1にクレーターの空間分布に偏りが存在すると判定された場合、その偏りが見つかる場所を二次クレーターの存在する場所と判定する。この手順を「かぐや」の月面画像データで実施したところ、二次クレーターの抽出に十分使えることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「二次クレーターの抽出」という課題は研究計画では平成23年度に実施予定であった。しかし、二次クレーターの抽出手順の確立にもっとも時間がかかるという懸念材料が年度初めに生まれた。そこで平成23年度から研究遂行して年度内に二次クレーター抽出手順の目途がたったことが自己評価理由である。
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今後の研究の推進方策 |
二次クレーターの抽出手順に目途はたったが、手順の中に調整が必要な項目・設定がある。特にシミュレーション回数に依存してそのクラスター分析の平均や分散が変化し、検定場所によってはシミュレーション回数が1万回近く必要に思われる。一か所の検定・二次クレーター抽出時間に数日を要するため作業が非効率である。この課題を解決するために抽出アルゴリズムの改良を行う。これと並行して、クレーター生成率関数の再導出を「かぐや」とルナ・リコネッサンス・オービターデータを利用して実施する。手動によって探査データからクレーターを抽出するが、主観的な判断による二次クレーターの除去を行う必要はなく、それは平成23年度に確立した手順に従う。研究計画では、平成23年度に岩石サンプルが採取されている地点付近の地質分類を実施する予定だったため、これは繰り下げて行う。地質分類に必要な「かぐや」のマルチバンド画像データ(MIデータ)のモザイクデータは用意済みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
二次クレーターの抽出手順に目途はたったが、一地点の検定・二次クレーター抽出時間に数日を要するため作業が非効率である。この課題を解決するために抽出アルゴリズムの改良を行う予定であるが、一方で研究を遂行するために計算機を一台追加したい。また、研究成果を論文にするための投稿論文代、研究成果を発表するための国際学会旅費、解析データの保存のために大容量ストレージを一台用意する予定である。
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