岩石サンプルを得ることが難しい地球外惑星の天体表面について、その形成年代を推定する主な手法にクレーター年代学がある。1970年代以前にアメリカ主導で行われた月探査によって得られた限られた岩石サンプルの放射年代測定による絶対形成年代と、その採取場所のクレーターサイズ頻度分布との相関関係を表すクレーター生成率関数が1980年代に作成された。2000年代以降、クレーターサイズ頻度分布の解釈について研究者間で二次クレーターの影響が改めて議論されるようになった。二次クレーターとは衝突天体の月面衝突後に飛び出した放出物によって形成される二次的なクレーターのことであり、この二次クレーターが小天体衝突起源のクレーターと混在することによりクレーター年代学の精度が大きく揺らぐ。これまでは研究者の主観的な判断によって二次クレーターを除去してきたが、本研究ではクラスター分析に基づいて客観的に二次クレーターを取り除く手法の開発を平成23、24年度に実施した。 本研究では小天体衝突起源のクレーターによって形成されるクレーターの空間分布(ランダム)に、二次クレーターによって偏りが生じることに着目している。この手法を1980年代に作成されたクレーター生成率関数の一点である、アポロ15号着陸地点に適用した。この地点はクレーター生成率関数を導出したNeukumらが計測場所とクレーターの数の情報を論文に残している数少ない場所である。我々のアルゴリズムを適用すると、この領域の約半分がクレーターの空間分布に偏りがあることを示唆しており、このことから、1980年代の作成されたクレーター生成率関数の最新探査データによる再導出が有意であることを証明できた。
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