研究課題/領域番号 |
23740346
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
多田 訓子 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 技術研究副主任 (00509713)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Magnetotelluric法 / 三次元インバージョン / 三次元電気伝導度構造 / 海洋上部マントル / 地形効果 / スタグナントスラブ / マントルプルーム / フレンチポリネシア |
研究概要 |
電気伝導度構造はスラブやマントルプルームの温度、流体量、鉱物組成を知る上で重要な物性値として注目されている。スラブやマントルプルームは三次元構造であることが知られているため、これらの電気伝導度構造を解明するためには三次元解析が必須である。本研究では、面状に高密度に設置された海底観測点から得た電磁場データを研究代表者が近年開発した『海底電磁場データに対応した三次元インバージョンプログラム(以下、MarineWSINV3DMT)』を用いて解析することで、スラブやマントルプルームとその周囲のマントルの三次元電気伝導度構造を世界で初めて解明することを目的としている。 平成23年度は、インバージョン計算を行う際の海底地形の取り扱いの重要性と初期モデルの選定の重要性を検証するために、MarineWSINV3DMTを用いてスタグナントスラブの観測領域を想定したシンセティックテストを行った。その結果、より真の構造に近い三次元電気伝導度構造を得るためには、海底地形の凸凹をインバージョン中に組み込み、より真の値に近い初期モデルを使用することが重要であることが分かった。これらの結果は、国内や国外の学会で発表し、論文として成果をまとめ国際誌に投稿している。 ソサエティー・ホットスポットのマントルプルームを対象とした研究に関しては、観測データの時系列解析を行ってMTレスポンスを計算した。さらに、求めたMTレスポンスから、観測領域の平均的な構造である一次元電気伝導度構造を推定した。この一次元電気伝導度構造は、MarineWSINV3DMTを使った三次元インバージョンで初期モデルとして使用する予定である。 結果として求めた三次元電気伝導度構造を一般の人にも理解しやすい三次元で可視化するための準備として、MATLABとそれを実行させるコンピューターを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、MarineWSINV3DMTを実際の観測データに適用するための検証とスタグナントスラブの三次元電気伝導度構造の推定を行う予定であった。現在までに、MarineWSINV3DMTの検証は完了することができ、スタグナントスラブの観測データを使った三次元インバージョン計算を行うことができた。しかし、三次元電気伝導度の確定までには至っていない。 一方、ソサエティー・ホットスポットのマントルプルームの三次元電気伝導度構造を推定するために必要なMTレスポンスを求め、一次元電気伝導度を求めることができた。 したがって、達成度を『(2)おおむね順調に進展している。』とした。
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今後の研究の推進方策 |
MarineWSINV3DMTを用いて、スタグナントスラブとソサエティー・ホットスポットの三次元電気伝導度構造を求める。特にスタグナントスラブに関しては、平成24年度中に三次元電気伝導度構造を確定し、その分解能を検証する。また、得られた電気伝導度構造を地震波速度構造やマントル構成岩石の高温・高圧実験の結果と照らし合わせることによって、スタグナントスラブとその周辺構造の温度構造や含水量などについての議論を行う。 平成24年度から主に平成25年度にかけて、ソサエティー・ホットスポットの三次元電気伝導度構造の推定を行う。ソサエティー・ホットスポットを対象とした観測は、フランスのブルターニュ大学との協力体制で行っており、一部のデータはブルターニュ大学の共同研究者が所有している。これらのデータを統合することによって、より信頼度の高い三次元電気伝導度構造を得ることができる。得られた電気伝導度構造の解釈や投稿論文の作成を円滑に進めるためには、共同研究者と直接議論を行うことが有効であり、そのためにブルターニュ大学に滞在する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、国内の学会、および、国際学会で研究成果について発表を行うための経費を計上する。これらの発表ではスタグナントスラブの三次元電気伝導度構造や、その構造から考察される温度構造、含水量などについての発表・議論を行う。 平成25年度は、ブルターニュ大学での滞在費、学会発表、および、論文投稿の経費を計上する。ソサエティー・ホットスポットの研究は、ブルターニュ大学の研究者と共同で行っている。彼らのデータを統合して解析し、研究成果を投稿論文として効率的にまとめるために、ブルターニュ大学に滞在する必要がある。
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