研究課題/領域番号 |
23740359
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
水田 亮 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (80589862)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 大気現象 / 気候変動 / 自然災害 / 温帯低気圧 / 地球温暖化 |
研究概要 |
大雨・大雪や強風災害をもたらすような強い温帯低気圧の発生が、地球温暖化に伴ってどのように変化するかについて、世界各機関の多数の気候モデルによる実験結果の比較・解析を行った。気候モデル計算結果は、CMIP5 (Coupled Model Intercomparison Project Phase5)において公開される予定のものを利用している。これはIPCC第4次評価報告書での気候モデルによる将来予測のベースとなったCMIP3の、次の後継プロジェクトに当たる(Phase4は欠番)。CMIP5においては実験結果が順次公開されており、公開サーバより実験データの取得をおこない、これまでに取得した9の気候モデル計算結果を使用した。それぞれのモデル実験結果について、モデル毎に低気圧を抽出し、強度別の発生数や発達率の頻度分布・地理分布を計算し、いずれのモデルも観測された分布をおおむね再現できていることを確認した。次に、それぞれのモデルの、代表的な温室効果ガス排出シナリオであるRCP4.5に基づいた将来変化実験であるの結果について同様の計算を行い、現在気候実験に対する将来実験の気候変化について調べた。北半球冬季について調べたところ、モデル毎に結果にばらつきがあるものの、とくに北西太平洋の極側で発達率の増加が見られることは多くのモデルで共通していた。また対流圏中上層のジェットも多くのモデルでその地域で共通して増加していた。北大西洋においてはモデル間の一致は北西太平洋に比べて低くなっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、世界各機関による多数の気候モデル実験結果の比較・解析を開始することができた。実験データは順次公開中であり、それに伴って解析をいくらか修正する必要がある可能性があるが、多くのモデルに共通する変化の特徴を抽出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き将来実験の気候変化の比較・解析を、とくに将来起こりうる可能性の高い事象と不確実性の高い事象の区別という観点から行う。多数のモデル結果を比較することにより、多くのモデルに共通する変化であるか、モデルによってばらつきの大きい変化であるかを指標として、将来起こりうる可能性の高い事象と不確実性の高い事象を区別して示す。冬季の低気圧発生数については、CMIP3モデルでは全体の発生数がいずれのモデルでも減少し、強いものの発生数が多くのモデルで増えるという傾向が得られており、CMIP5でも同様の傾向が見られるかどうかまず確認する。上に述べた環境場の変化と発生変化の因果関係がある程度明確になれば、起こる可能性の高い環境場の変化と、起こる可能性の高い低気圧変化とを関連づけて議論することができるようになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでのところ結果の比較に必要な実験結果が十分に公開されている気候モデルが想定していたより少なかったため、結果を保存するためのデータストレージの購入を見送っていたが、順次公開が進んでいるので次年度に購入を行う予定である。
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