研究課題/領域番号 |
23740359
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
水田 亮 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (80589862)
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キーワード | 温帯低気圧 / 地球温暖化 |
研究概要 |
大雨・大雪や強風災害をもたらすような強い温帯低気圧の発生が、地球温暖化に伴ってどのように変化するかについて、世界各機関の多数の気候モデルによる実験結果の比較・解析を行った。気候モデル計算結果は、CMIP5 (Coupled Model Intercomparison Project Phase5)において公開されている11の気候モデル計算結果を取得して利用した。 それぞれのモデル実験結果について、モデル毎に低気圧を抽出し、強度別の発生数や発達率の頻度分布・地理分布を計算し、現在気候実験に対する将来実験の気候変化について調べた。北半球冬季について調べたところ、モデル毎に結果にばらつきがあるものの、北西太平洋の極側で発達率の増加が見られることは多くのモデルで共通していた。また対流圏中上層のジェットも多くのモデルでその地域で共通して増加しており、月ごとに調べるとその領域のジェットの強さと低気圧発達率の間に、いずれのモデルでも高い相関関係が見られた。この関係を利用することにより、現在気候における相関関係とジェットの平均的な将来変化から、低気圧発達率の変化をおおむね推定できることを示した。北西太平洋域では相関関係の高い場所とジェットの変化する場所が重なっているため目立った変化が見られる。一方、北大西洋域では重なりが小さいために発達の変化のモデル間のばらつきが大きくなっていた。 またこれらの相関関係がどのようなメカニズムで実現されているかについて、上層のロスビー砕波パターンや圏界面高度の変動との関連性の観点から調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、世界各機関による多数の気候モデル実験結果の比較・解析をおこない、多くのモデルに共通する変化の特徴を抽出し結果をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き将来実験の気候変化の比較・解析を行う。特に環境場の変化と発生変化の因果関係に着目する。対流圏上層の変化と地上付近での低気圧発達の強化との関連性について、CMIP5モデルで両者の関連性が見られること、多くのモデルに共通する変化をする領域とモデルによってばらつきの大きい変化をする領域があることがわかったが、両者の関連性についてより詳細に、対流圏上層の波動活動やブロッキングとの関連性を念頭に置いて解析を行う。またばらつきの大きい変化についてはその変化とモデルの設定・解像度などとの関連性が見られるかどうかについても調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表のための論文投稿料、英文校正料、国内旅費、海外旅費、学会参加費に使用する。また解析結果の保存のためのデータストレージを追加して購入する。
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