大雨・大雪や強風災害をもたらすような強い温帯低気圧の発生が、地球温暖化に伴ってどのように変化するかについて、世界各機関の多数の気候モデルによる実験結果の比較・解析を行った。気候モデル計算結果は、CMIP5 (Coupled Model Intercomparison Project Phase5)において公開されている11の気候モデル計算結果を取得して利用した。 それぞれのモデル実験結果について、モデル毎に低気圧を抽出し、強度別の発生数や発達率の頻度分布・地理分布を計算して、現在気候実験に対する将来実験の気候変化について調べた。北半球冬季について調べたところ、モデル毎に結果にばらつきがあるものの、とくに北西太平洋の極側で発達率の増大が見られることは多くのモデルで共通していた。また対流圏中上層のジェット風速も多くのモデルでその地域で共通して強くなっており、月ごとに調べるとその領域のジェットの強さと低気圧発達率の間に、いずれのモデルでも高い相関関係が見られた。このことから対流圏中上層のジェットの変化が低気圧発達の変化をもたらすと考えられる。 この関係がどのようなメカニズムで実現されているかについて調べるため、低気圧発達に対する上層の寄与と下層の寄与の見積もりをおこなった。高度別のQベクトルの値から、その高度の流れ場が低気圧付近の下層の上昇流の生成にどの程度寄与するかを求めた。まずアンサンブル予報実験に適用することにより、上昇流に対して上層の寄与が大きいほど低気圧の急発達が起きやすいことが確かめられた。次にこれをモデル結果に適用したところ、将来気候実験においては、現在気候実験に比べ北西太平洋域で相対的に上層の寄与が増加していることを示唆する結果が得られた。
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