研究課題/領域番号 |
23740360
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
木田 新一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (50543229)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 大気海洋相互作用 / インドネシア多島海 |
研究概要 |
Multi-Scale Simulator for the Geoenvironment (MSSG)を用いて、インドネシア海の海面水温が変動する力学メカニズムの理解を進めている。局所プロセス・遠隔プロセス・そして大気海洋相互作用それぞれが及ぼす力学メカニズムとその効果の見積もりを検証している。初年度は、局所的なプロセスの影響を検証するためのインドネシア多島海の領域モデルを構築した。海面水温に影響を与えうる季節、そしてその力学メカニズムを検証した。モデル結果から、インドネシア通過流が主に夏期を中心に海面水温へ影響を与えうることが示唆された。ただその応答感度は、大気活動に比べ弱い。それに比べ、局所的な大気場擾乱は一年を通して海面水温に影響をもち、応答感度も強い。このことからインドネシア海の海面水温の変動は局所的なメカニズムとしてはインドネシア通過流より大気場の変動、そしてそれによる風成循環が大きく作用していることが予想される。本年度はインドネシア通過流や多島海の海峡を解像できるインド洋-太平洋モデル海盆スケールの高解像度モデルの構築も同時に行なってきた。このモデルは次年度で行う遠隔プロセスの検証に用いるものであり、基礎的な検証が終了した。研究成果を国内外ともに積極的に発表してきている。初年度はアメリカ・Woods Hole Oceanographic Institutionにてセミナー発表、日本地球惑星科学連合大会にて口頭発表、そしてOcean Sciences Meeting にてポスター発表を行ってきた。インドネシア海周辺の専門家と多くの意見交換と情報収集を行いながら、成果の発信を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、経年変動を検証するためのインドネシア多島海の領域モデルを構築し、局所的なプロセスで海面水温が変動するメカニズムにを検証する計画であった。インドネシア通過流、そして局所的な大気変動、の2プロセスが与えうる効果を検証である。これまでのモデル結果から、インドネシア通過流が主に、春-夏-秋の期間に影響を与えうることが示唆された。ただ、その効果は弱く、大気活動に作用しうる顕著な変化にはなりにくい。それに比べ局所的な大気場擾乱は一年を通して海面水温に影響をもち、応答感度も強いことが示唆された。局所的なメカニズムとしてはインドネシア海の海面水温の変動はインドネシア通過流より大気場の変動、そしてそれによる風成循環が大きく作用していることが予想される。本年度はインド洋-太平洋モデル海盆スケールモデルの構築も同時に行なってきた。このモデルは次年度で行う遠隔プロセスの検証に用いるものである。基礎的な検証実験は終了し、次年度の研究計画を実行するための準備も整ったと考えている
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、計画通り、インド洋―太平洋・海盆スケールモデルを用いて遠隔的なプロセスであるインド洋から伝わるケルビン波や太平洋から伝わるロスビー波がインドネシア多島海の海面水温を変動させる効果を解明する。IODとENSOが引き起こす大気場擾乱をそれぞれの海上で別々に強制することで、伝搬するケルビン波、ロスビー波がそれぞれインドネシ多島海の海面水温に与える影響を明らかにする予定である。また25年度に向け、インドネシア海の大気海洋領域カップルモデルの構築への準備を進める予定にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
インド洋-太平洋海盆スケールモデルから出力されるデータを解析するためのハードディスクの購入。そして気候変動の専門家が多く在籍するUniversity of Hawaiiへの情報収集と、国際学会にて成果発表(Singapore, Asia Oceania Geosciences Society)を行うための外国旅費に使用する。
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