研究課題/領域番号 |
23740360
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
木田 新一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (50543229)
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キーワード | 大気海洋相互作用 / インドネシア多島海 / 縁辺海 |
研究概要 |
Multi-Scale Simulator for the Geoenvironment (MSSG)を用いて、インドネシア海の海面水温が変動する力学メカニズムの理解を進めている。局所プロセス・遠隔プロセス・そして大気海洋相互作用が及ぼすメカニズムとその効果の見積もりを検証している。 本年度はインド洋・太平洋に起因する遠隔プロセスがインドネシア多島海の海面水温に与える影響を検証するための海盆スケール海洋モデルを構築した。初年度に構築したインドネシア多島海の高解像度領域モデルと同様の解像度をもたせ、インドネシア通過流や島々を十分に解像できるようにした。さらにモデル構築に伴う作業を集中的に行うため、最終年度に構築する予定であった高解像度大気海洋カップルモデルの構築も行った。このモデルも領域モデル・海盆スケールモデルと同様の解像度で構築している。 また本年度は、初年度に構築した領域モデルを用いて、大気の経年変動・季節内振動による夏季の海面水温の応答を検証した。これは、初年度の研究成果からインドネシア通過流が主に夏期を中心に海面水温へ影響を与えうることがわかっていたためである。ただインドネシア通過流が与える海面水温への影響が大気活動に比べ弱いことも示唆されていた。モデル実験から、インドネシア海域内でも海面水温の応答強弱に差が現れることが確認された。 研究成果を国内外ともに積極的に発表しておりアジア大洋州地球科学連合大会(AOGS)、インドネシア技術評価応用庁にて開催されたシンポジウムで口頭発表を行った。また初年度の成果を含んだ論文をJournal of Geophysical Research - Oceanにて出版した。インドネシア海周辺の専門家と多くの意見交換と情報収集も行いながら、成果の発信を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はインドネシア多島海の海洋領域モデルを構築し、局所的なプロセスで海面水温が変動するメカニズムの検証が可能になった。本年度はさらにインド洋・太平洋をまたぐ海盆スケール海洋モデルを構築し、遠隔プロセスがインドネシア多島海の海面水温の与える影響を検証できるようにした。当初の計画通りに、モデル構築が順調に進んでいる。 また初年度の結果から得られた大気場の擾乱による海面水温変動の重要性の認識から、主に来年度行う予定であった高解像度大気海洋カップルモデルの構築も本年度に行った。その結果、当初は本年度に行う計画だったモデル出力データの解析作業が遅れている。ただ来年度に費やすモデル構築の時間を減らし、三種類のモデルを用いた検証実験とその解析を進められるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はまず海盆スケールモデルを用いたモデル実験を解析する予定である。インド洋・太平洋からの波がインドネシア多島海の海面水温を変動させる物理メカニズムを検証する。領域モデルで再現された海面水温と比較することで遠隔プロセスの効果も明らかにする。 また大気海洋カップルモデルで再現されたインドネシア多島海の海面水温の変動を解析する。海洋モデルのそれと比較することで大気海洋相互作用の効果も検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として、インド洋-太平洋海盆スケールモデルから出力されるデータを解析するためのハードディスクの購入を計画している。 また旅費として、アジア大洋州地球科学連合大会(Brisbane, Australia)とOcean Sciences Meeting (Honolulu, USA)への外国出張を計画している。
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