研究課題
Multi-Scale Simulator for the Geoenvironment (MSSG)を用いてインドネシア海の海面水温が変動する力学メカニズムの理解を進めてきた。局所プロセス・遠隔プロセス・そして大気海洋相互作用が及ぼすメカニズムとその効果の見積もりを検証している。初年度は領域海洋モデルを中心に用いて解析作業を行い、昨年度は海盆スケール海洋モデルと大気海洋結合モデルの構築を行った。最終年度の本年度は、海盆スケールモデルと領域モデルを比較しながら解析作業を行った。数値モデルと観測データからインドネシア多島海で起きる海面水温の変動は主にモンスーン風による局所変動によってもたらされていることが明らかになった。領域モデルは海面水温の変動をかなり現実に近いものを再現している。経年変動において議論されることが多かったインド洋から到達するケルビン波は、高解像海洋モデルを用いたとしてもその海面水温への直接的な影響が限定的であることが明らかになった。これはインド洋ダイポールによって励起されるケルビン波がインドネシア多島海に侵入する前に多くのエネルギーを散逸してしまうことに加え、夏から冬にかけてインドネシア多島海の海面水温が大きく変動する東側の海域へ到達しないためである。ケルビン波はロンボック海峡からマカッサル海峡と主にインドネシア海の西岸を伝搬する。太平洋で励起されるロスビー波は、インドネシア多島海でケルビン波へと変化し海域の東側を伝搬するため、季節によっては海面水温の経年変動に寄与しうることを示唆している。本研究によって遠隔プロセスがインドネシア多島海の海面水温の変動にもたらす影響力は、その波が到達する季節を十分に考慮する必要があることが明らかになった。
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The Indo-Pacific Climate Variability and Predictability, World Scientific Publisher on Asia-Pacific Weather and Climate book series
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