研究課題
本研究の目的は、全球海盆で確認されている底層昇温現象のメカニズムを解明するとともに海洋全層の貯熱量変化のうち、これまでほとんど考慮されることのなかった深層の寄与についての知見を得ることである。最終年度はこれまでに得られている感度解析実験結果や作成した統合データセットを用いて3次元的な海洋昇温の貯熱量変化に対する寄与を評価し、その結果を学会等で公表するとともに論文にまとめた。海盆スケールの貯熱量の変動に関しては、数十年の時間スケールでみると中深層は表層に比べ変動の振幅が小さいが、その時間スケールは長い。ここでは水温の変化に対する貯熱量の感度が中深層でどの程度の値を持つかを定量的に示した。本研究ではさらに中長期の貯熱量モニタリングにどのような観測システムが効率的かについても数値実験を通して提言することができた。研究期間全体を通じては、大西洋、インド洋での深層昇温が数十年の時間スケールでは主に南極周極流海域の中層の海況に変動の起源をもっていることが示唆され、太平洋よりもより長期の気候変動現象、大気との熱・淡水交換に深いかかわりを持つ可能性が高いことを示した。これは海洋の熱バランス(熱の再配分)と海洋深層の海洋環境変動との関係のみならず、循環場変動と熱バランスの変化との関係を理解する上でも重要な知見となりうる。また、海盆スケールの貯熱量変化に対する各層の水温変化の寄与を感度解析から評価したことで、貯熱量変化のモニタリングに関する新たな知見を得たことも海洋観測研究の推進にとって大きな意義を持つ。
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