研究概要 |
独ベルリン自由大学が提供している、1953年から2012年までの60年分の東西風観測データを解析し、QBOの強さの変化を調べた。観測データから計算された高度70hPaにおけるQBOの振幅は、この60年間で30%以上減少している事が見出された。また、IGRAで提供されている世界中のゾンデ東西風データも利用した。70hPaにおけるQBO振幅の長期トレンドを解析可能な観測地点は5点存在し、全ての観測点において、下部成層圏のQBO振幅が弱まっている事が発見された。 さらにIPCCの第5次評価報告書に使用される、最新の気候モデルデータ(CMIP5)について、地球温暖化に伴うQBOと赤道域上昇流の変化を解析した。QBOを再現する事に成功しているドイツ、イギリス、日本の気候モデル全てで、20世紀から21世紀にかけて、QBOが弱まり、赤道上昇流が強まっている事が確認された。また、温暖化を伴わない気候モデル実験では、このような変化は見られず、QBOと赤道上昇流の変化は地球温暖化によるものであると裏付けられた。 温暖化に伴ってBrewer-Dobson(BD)循環が強化される事は、ほぼ全ての気候モデルで予測されている。しかしBD循環にともなう赤道域上昇流のトレンドを直接的に観測する精度は無く、現実大気でBD循環が強まっているかどうかは不明である。本研究は温暖化のシグナルがQBOという現象に現れている事を示すとともに、近年活発に議論されているBD循環の強化を、間接的ではあるが観測データから世界で初めて立証した成果である。研究成果はNatureに発表された(Kawatani and Hamilton 2013, Nature, 497, 478-481, doi:10.1038/nature12140)。
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