研究課題/領域番号 |
23740364
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
千喜良 稔 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (20419146)
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キーワード | サーマル / エントレインメント |
研究概要 |
平成24年度は、Jung and Arakawa (2008)に基づく、渦度を直接予報するタイプの渦解像モデル、「ベクトル渦度モデル」を、より汎用的に使用可能にするため、変数出力ルーチンなどのライブラリの整備、温度と渦度の拡散過程の導入を行った。また、適切な解像度・時間ステップを明らかにするための、予備実験を行った。 平成25年度に入り、本モデルを用いて長期間の実験を行うと、モデル内の温度が徐々に非現実的に上昇してしまうバグが存在することがわかった。平成25年度は、その原因を同定し、問題の修正を行い、長期間の積分が可能になるようにモデルを改良した。 サーマルのエントレインメントの量を見積もる方法について検討を行った。エントレインメントを見積もるにはサーマルの内部と外部を区別しなければならない。サーマルの内部を、温位と渦度の閾値によって定義し、保存性を持つトレーサーを移流させ、サーマル内部のトレーサーの量の変化を追跡することにより、サーマルのエントレインメントをよく見積もることができることを確認した。 サーマルのエントレインメントがどのような要因で変化するかを明らかにする実験を行う上で、サーマルに関する既存の理論をふまえることが重要であるため、サーマルやプリュームのエントレインメントに関する文献調査を行い、多数の論文を読了した。 サーマルのサイズ、成層の安定度を変化させた実験をいくつか行った。これらの結果をどのように解釈するかについて、既存の理論をふまえた検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、1年目にベクトル渦度モデルを開発し、2~3年目にそれを用いてサーマルの実験を多数行い、エントレインメントがどのような要因に影響されて決まっているかを明らかにすることであった。ベクトル渦度モデルの開発はすでに終了しているが、ライブラリの整備や、のちに明らかになったバグの修正に想定以上の時間を費やすこととなった。また、平成24年度の11月からコロラド州立大学に長期留学をすることになり、留学の準備および新たに依頼された課題の遂行により、計画に遅れが出ることになった。そのため、研究期間の1年間の延長を申請した。しかし、すでにエントレインメントを解析するための実験をいくつか行っており、最終的な目的であるエントレインメント過程の解明に近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
ベクトル渦度モデルを用いて多くの実験を行える環境は整っており、すでにいくつかの実験を行っている。平成26年度は、これをさらに発展させ、鉛直シアー、サーマルの初期の浮力や速度を様々に変えた実験を行う。それらの結果を、相似則や渦度・エネルギーの生成と関連づけて解釈を試みる。残りの研究機関が限られているため、どこまでできるかはわからないが、可能な限り解釈を行い、研究結果をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に遅れが出たため、論文の出版経費として見込んでいた額が余ることになった。また、平成24年度の11月からコロラド州立大学に長期出張しているが、日本での所属機関の規定により、海外長期出張先での高額な物品購入が制限されているため、コンピューター機器のグレードアップとして想定していた経費を使用していない。以上の理由により、未使用額が生じている。 平成26年度は、本研究に関係する有益な情報交換のための、諸々の研究会および特定研究者との議論のための出張旅費に主たる研究費を使用する予定である。また、本研究を効率的に進めるのに必要な少額のコンピューター関係の周辺機器・ソフトウェアにも研究費を一部使用する予定である。
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