研究課題
研究計画にあるドイツでの大気光イメージャの運用の準備段階として,2010-2011年にドイツとノルウェーにて既に実施した大気光イメージャとライダーの同時観測データのデータベースを作成するとともにウェッブにてクイックルックを公開した.また,2010年11月26日の同時観測イベントを詳細に解析した.ナトリウム大気光イメージング観測による中間圏界面付近(高度 92 km)の大気重力波の水平構造とライダー観測による成層圏から下部熱圏高度(30-105 km)までの温度の鉛直プロファイルを組み合わせることで,MLT 高度に達する大気重力波がどのように鉛直方向へ伝搬し,どのように MLT 高度の水平構造につながるかを観測的に明らかにした.また,観測値と客観解析データを用いて,大気重力波のレイトレーシング解析を行い,超高層大気の大気重力波が極渦の蛇行によって発生していることを初めて示した.このことは,対流圏界面の極渦内の非地衡流が直接的に遥か上空の超高層大気のダイナミクスに寄与することを示唆している.得られた成果は,2011年7月にオーストラリア・メルボルンで開催された International Union of Geodesy and Geophysics,2011年12月にアメリカ・サンフランシスコで開催された American Geophysical Union Fall meeting および国内の学会・研究会にて報告した.また,国内(国立極地研究所)にて大気光イメージャの校正実験を行なった.さらに機器をドイツ・IAP 敷地内に設置し,自動観測のシステムを構築した.これにより IAP のライダーとの同時観測を実施できる状況となっている.
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画のドイツでの大気光イメージャと IAP ライダーの同時観測の準備を進めたが,イメージャの整備,データ解析ツールの開発が計画以上に進展したため,2012年度に計画していた大気光イメージャの設置を2011年度末に完了することができた.これは,今年度に実施した事前の観測データの解析によって,観測プランの最終調整が効率良く行なえたことも大きく貢献した.また,大気光イメージャとライダーの同時観測の初期解析結果を多くの学会にて報告することができた.
本年度にドイツに設置した大気光イメージャと現地のライダーによる大気重力波の同時観測キャンペーンを精力的に進めていく.本年度に解析したイベントから,下層大気の極渦から波動が超高層に至る鉛直伝搬過程について議論したが,これらの波動の影響がどのように異なる緯度帯に水平伝搬していくのかについては未だよく分かっていない.観測を実施するドイツ・Kuehlungsborn(54N)は極域から中緯度に伝搬する大気波動を捉えるのに適した場所に位置している.また,ライダーにより地表から高度100 kmまでの大気温度プロファイリングが実施されており,伝搬路を議論するための必須情報を得ることができる稀有な観測点である.
大気光イメージャとライダーの同時観測が本格的に進められる次年度は,データベースの作成,観測データのバックアップ,その後の解析を効率良く行なうために,画像処理を高速に行なうことができる計算機とともに大容量ハードディスクドライブを購入する.また機器の調整や同時観測の実施のために,研究代表者が日本とドイツを往復する.さらに研究成果の報告のために,論文掲載費と国内・国外で開催される学会への参加費を請求する.
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件)
Journal of Geophysical Research
巻: Vol.116 ページ: D19109
10.1029/2011JDo15882
Geophysical Research Letters
巻: 38 ページ: 1-5
10.1029/2011GL048685