研究課題
磁気嵐時に見られる全球地磁気変動は、磁気圏を流れる電流によるものに加えて太陽風磁気圏相互作用によって極域電離圏に持ち込まれる大規模な電場が駆動する電離圏電流とオーロラ活動に関連した電離圏擾乱ダイナモ電流によるものと考えられている。しかしながら、両極域から赤道域に至る広範な領域をカバーする綿密な地磁気データ解析の不足から、磁気嵐の発達期と衰退期に見られる地磁気変動の特徴やその要因について完全には理解されていない。そこで本研究では、磁気嵐時の全球地磁気変動の特性を調べるために、2002年の1年間に発生した磁気嵐について両極域から赤道域における地磁気データの解析を行った。このとき、地磁気変動の原因とされる電離圏電流の分布を推定するために、世界地図上に等価電流ベクトルを描き、その時間発展を調べた。その結果、磁気嵐の発達期における等価電流分布は、中緯度から極域において、磁気圏対流電場の強まりに伴って明瞭な2セル型の構造を持ち、その渦の中心が磁気嵐の大きさに依存して低緯度側に移動する傾向が見られた。そして、その影響が磁気緯度30度付近の低緯度領域まで広がっていることが明らかになった。一方、磁気嵐の衰退期の初期段階における等価電流分布は、これまで支配的であった2セル型の電流分布がはっきりしなくなり、極冠域と中緯度領域に磁気嵐の発達期のものとは極性が反対の電流構造が出現していた。さらに、昼間側磁気赤道域では、西向きの赤道ジェット電流成分が強まっていた。特に、中緯度に出現した電離圏電流渦の特徴は、従来の電離圏擾乱ダイナモ電流の作る電流分布と異なっており、磁気圏を流れる非対称環電流につながる領域2型の電流系によるものと考えられる。よって、本研究における重要な成果の一つとして、全球地磁気変動分布を参照することにより、磁気嵐時の西向き赤道ジェット電流の起源を分離・同定したことが挙げられる。
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宇宙科学情報解析論文誌
巻: 3 ページ: 印刷中
Advances in Polar Science
巻: 24 ページ: 296-314
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