研究概要 |
太陽系惑星において, 水星は非常に希薄な大気を持ちつつ, 固有磁場を有する唯一の惑星である. 他に固有磁場を持つ惑星である地球・木星・土星においては既に周回衛星による探査が行なわれ, 濃い大気を持つ惑星の磁気圏については研究が進められてきた. 一方, 水星では2011年3月にようやく初の周回衛星観測が開始されたばかりであり, 惑星科学分野においては未開の地である. 大気と磁場を持つ惑星では磁気圏からの降り込み粒子と大気粒子の衝突によるオーロラ発光現象が観測されているが, 大気が非常に希薄な水星においては, 降り込み粒子が大気粒子の代わりに固体表面に直接衝突する. 過去に行われてきた大気光観測結果は, 大気が高緯度領域から放出される傾向が高い可能性を示しているが, 継続的な磁気圏観測がこれまで行なわれていなかったため結論は出ていない. 本研究の目的はメッセンジャーの観測期間に合わせて大気光観測を実施し, 水星磁気圏と固体表面の相互作用の全容を解明することである.水星は太陽に近いため、日没後あるいは日の出前に観測を行なう場合、観測時間が30分程度に限られる。一方、日中にも観測を行なえば観測時間を飛躍的に延長する事ができる。私は岡山天体物理観測所で日中に水星観測を実施した実績があり、2011年度にも岡山で観測を実施した。しかし天気が非常に悪く、年度前半の時点で1日もデータを取る事ができなかった。そこで、私はハレアカラ観測所で日中に水星観測を実施するため、望遠鏡に専用の遮光フードを作成した。現地ではフードに使える素材を購入するのが困難であったため、あらかじめ望遠鏡の大きさ、観測ドームの大きさなどを調査し、材料を日本で購入し現地での加工を行なった。その結果、これにより、9月には日中に観測を実施することができるようになり、1日あたり5-10時間程度という長時間の観測に成功した。
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