研究概要 |
地球・木星・土星の周回衛星観測により, 固有磁場と濃い大気を持つ惑星磁気圏の姿が明らかになってきた. これらの中でも水星は固有磁場を持つが大気は希薄であり, 磁気圏と固体表面が直接相互作用しているという点で他と異なる磁気圏を持つ. ナトリウム大気はその相互作用によって生成されると考えられ地上観測が続けられてきたが, 磁気圏観測が行われておらず大気生成過程は謎のままであった. 本研究では2011年3月に初の水星周回衛星メッセンジャーが周回軌道に投入され磁気圏観測を開始したのと同時にナトリウム大気の地上観測を行い, 磁気圏活動と大気密度分布を捉えることで「水星磁気圏と固体表面の相互作用」の解明を目指し研究を進めてきた. 地上観測はハワイ・ハレアカラ観測所で実施した. 先行研究では大気密度の上昇が観測によって検出されており, 太陽からのコロナ質量放出(CME)が水星に到達することによって水星表面からナトリウムがより多く放出され大気密度が高くなったと考えられている. しかし, 当時は周回機がなかったために本当にCMEが到達したという証拠は得られていない. 現在ではメッセンジャーが周回観測を行っており, 太陽風粒子を検出できないため直接CMEの到達を確認することはできないが, 磁場の測定からCMEが到達したかどうかを推測できる. 本研究では, メッセンジャーの磁場データからCMEが到達したと思われる時刻において, 観測された大気密度の変動の有無を調査した. 2例の観測時にCMEが到達したと考えられるが, この時に大気密度はほとんど変動していなかった. このことから, 太陽風衝突による大気放出量は先行研究で予想された量よりも少ないという結果が得られた.
|