研究課題/領域番号 |
23740378
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
尾上 哲治 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (60404472)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙塵 / 中生代 / 古生代 / 太古代 |
研究概要 |
平成23年度は,中・古生代の地球に付加した宇宙塵を取り出すために, 1)秩父帯(大分県津久見市),2)美濃帯(愛知県犬山市),3)足尾帯(栃木県日光市)のペルム系~ジュラ系チャートから試料を採取した.また太古代(32億年前)のチャート試料については,平成23年11月に西オーストラリアのクリーバビル地域の掘削プロジェクトに参加し,試料を採取した. 採取した試料については,申請者がこれまで行ってきた宇宙塵分離の方法により,磁性スフェルールを分離・回収した.また同時に放散虫化石を用いて採取試料の正確な年代決定を行った.磁性分離により取り出した溶融宇宙塵候補は,エネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)を用いて定性元素分析を行い,宇宙塵か否かの判別を行った.同定にあたっては, 1)元素スペクトルがコンドライト的であること,もしくは2)鉄,ニッケル,クロム以外に%オーダーの元素を含まないことを条件とした.スフェルールは,深海底堆積物や南極氷床から報告されているものと同様に,鉄質(I type),石質(S type)スフェルールに分類できた.このうちIタイプスフェルールは,全体の9割以上と大部分の割合を占めることが明らかになった.さらに電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)による化学組成の定量分析を行った結果,これらのスフェルールは南極氷床から報告されているスフェルールに化学組成がよく比較できることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,以下の計画を予定していた.(1)1~3億年前, 19~35億年前の溶融宇宙塵をチャート中から回収する.(2)化学組成を定性分析し,宇宙起源物質であることを明らかにする.当該年度は,岩石試料の採取から宇宙塵の分離回収まで順調に進んでおり,上記の目標を十分に達成しているといえる.特に採取した試料のうち太古代のものについては,新鮮なボーリングコアからの試料を得ており,この点が今後の研究成果の質を左右すると期待される.また平成23年度の発表した研究成果は,学会発表7件,国際誌への論文掲載が2件であった.以上の点から現在までの研究の達成度は良好であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は平成23年度に採取した試料に加え,カナダWilliston湖に露出する三畳紀石灰岩試料を採取する予定である.この地域の三畳紀石灰岩は非常に保存状態がよく,また年代決定が詳しくなされていることから,当時の地球に降下した宇宙塵のフラックスを求めることが可能であると考えている.また室内実験としては,現有設備の分析機器を用いて以下の2つの研究を行う予定である.(1)宇宙塵の化学組成の解析 平成23年度にEDXによる非破壊分析を終えた溶融宇宙塵は,導電性エポキシ樹脂で埋め込み,断面の研磨後にX線マイクロアナライザー(EPMA)で化学組成分析を行う.また近年EPMAを用いた鉄の酸化状態解析が行われており,スピネル鉱物中に含まれるFe2+/Fe3+比の定性分析を試みる.(2)宇宙塵の鉄酸化状態の解析スピネル鉱物中に含まれるFe2+とFe3+の化学組成比は,最新のX線光電子分光分析装置(XPS)を用いて試料へのX線照射による光電子のエネルギーシフトから定量する.分析にあたり試料断面削り出し後の表面の酸化皮膜の影響をさけるため,アルゴンビームで表面のスパッタリングを行った後で分析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,物品費200,000円,旅費600,000円,その他100,000円を計上している.このうち旅費は,カナダWilliston湖への調査旅費が大部分を占めると考えられる.またカナダからの試料の送付代として100,000円程度の支出を予定している.物品費用としては,宇宙塵の分離・回収に必要な薬品や器具,微化石年代決定のための薬品代を予定している.
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