研究概要 |
中生代の地球に付加した溶融宇宙塵を取り出すために,1)秩父帯(大分県津久見市),2)美濃帯(愛知県犬山市)の三畳系~ジュラ系チャートから試料採取を行った.溶融宇宙塵はマグネタイトなどの磁性鉱物を含むため,申請者がこれまで行ってきた宇宙塵分離の方法により,採取した試料は粉砕後500 mTの外部磁場で磁性分離した.分離した磁性成分のうち溶宇宙塵と考えられる球状のものはマニピュレーターを用いて実体顕微鏡下で拾い出した.以上の宇宙塵分離・回収技術は本研究課題で発展させたものであり,この方法は,国内雑誌へ論文投稿した。 磁性分離により取り出した溶融宇宙塵候補は,エネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡を用いて定性元素分析を行い,宇宙塵か否かの判別を行った.同定にあたっては, 1)元素スペクトルがコンドライト的であること,もしくは2)鉄,ニッケル,クロム以外に%オーダーの元素を含まないことを条件とした.その結果,昨年度までの研究でみつかった258個の溶融宇宙塵に加えて,あらたに45個の宇宙塵を発見した. 溶融した宇宙塵が被る1300-1700℃,大気酸素分圧下での酸化現象を電気炉で再現した実験からは,宇宙塵を構成する酸化鉱物のうちスピネル類のFe2+とFe3+の含有量の割合は,晶出時の酸素分圧に依存する地質酸素分圧計として使用できることが明らかになっている.本研究で得られた宇宙塵のスピネル類の鉄の化学組成(Fe3+/Fe2+比)から,鉄の地質酸素分圧計を用いて形成時の酸素分圧を求めるために,X線光電子分光法(XPS)を用いて,スピネル類の化学状態組成分析を行った.その結果,従来の分析手法では「鉄の総量」として求められていたFe2+とFe3+の含有量を,それぞれ分けて測定することが可能となったが,定量値の精度が期待していたものより低いことが明らかになった.
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