マントルの脱ガス史の解明は地球内部の熱的物質的進化史や大気海洋組成の変動に束縛条件を与える上で最重要要素の一つであるがほとんど何も分かっていない。というのも古い火山岩中の揮発性成分の定量的な見積もりは非常に困難であるからだ。火山岩に含まれるクロムスピネルのメルト包有物の研究は初生マグマの揮発性成分を見積もる上で大変有効であることを研究代表者が示し、その分析手法を確立した。本研究は27億年前と35億年前のコマチアイトに含まれるクロムスピネル中のメルト包有物の揮発性成分、主要、微量成分を分析し、これまでに行った研究結果と併せて、マントルプルームの脱ガス史に関して制約を与えるというものである。 大量の採取した岩石試料から選定したコマチアイトからクロムスピネルの分離を行い、平成23年度に購入した偏光顕微鏡を用いてクロムスピネル中のメルト包有物の記載を行い、平成24年度に購入したマイクロサンプリング機器を用いて、前処理を行った。ウッズホール海洋研究所のSIMS-1280を用いて、記載したメルト包有物の揮発性成分を分析する予定だったが、見つかったメルト包有物は最大でも15ミクロン程度と非常に小さく、精度よく分析が出来る30ミクロン以上のメルト包有物の発見には至らなかった。これまでに見つけた小さいメルト包有物はより微小領域の分析が可能な海洋研究開発機構高知コア研究所に平成23年度に導入されたNano-SIMSを用いて分析する予定である。しかしながら、揮発性成分の分析法をNano-SIMSで確立しないと分析できないので、引き続きこの分析法の開発を同時に行う予定である。
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