研究課題/領域番号 |
23740386
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中島 礼 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究員 (00392639)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 生体鉱物 / 軟体動物 / 地球化学 / 古生物学 |
研究概要 |
H23年度には試験材料としてのアワビ類を用いて、養殖場と実験室の環境でモニターシステムを構築する予定であったが、2011年3月11日の東北沖地震によって、養殖場やサンプル提供者、水産総合研究センターなどが被災したため、予定したアワビ類の分析を行うことが出来なかった。しかし2010年に岩手県の大槌湾と宮城県の泊浜で採集したアワビ類を材料として提供していただき、分析を進めた。そのほかにアワビ類の貝殻試料を新潟県の佐渡島からの試料提供と韓国沿岸における貝殻試料を材料として収集した。韓国沿岸での調査においては、アラゴナイトの殻からなる二枚貝類も研究材料として収集した。大槌と泊浜において収集したアワビ類の貝殻については、貝殻構造解析と貝殻の化学分析を行った。貝殻構造解析については、貝殻断面をアセテートフィルムを用い観察用に加工し、実体顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察し、貝殻に含まれるアラゴナイトやカルサイトの分布を把握した。また、軟X線による写真から、成長密度などを見積もった。貝殻の化学分析については、貝殻の粉末試料を質量分析計を用いて酸素・炭素安定同位体比の測定を行った。また、同様に粉末試料を採取して、ICP発光分光分析計を用いて微量元素の測定も行った。酸素・炭素安定同位体比の測定結果をみると、大槌湾の試料は2006年から2010年にかけての同位体比のサイクルが明瞭に判別出来た。また、泊浜の試料では2007年から2010年にかけてのサイクルが明確となった。とくに酸素同位体比は水温のプロキシーとして使えることが明らかとなり、今後研究を進める上で、アワビ類の貝殻の成長解析には酸素同位体比をツールとすることは有効であることがわかった。今年度の研究成果は予定より大幅に遅れたが、化学分析と構造解析の手法については今後とも有効に使えるという研究成果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2011年3月に発生した地震のため、本研究における飼育実験やサンプル提供を予定していた宮城県塩竃市の水産総合研究センターが被災してしまい、センターの復旧がすぐにできなかったため、購入予定の飼育機器や旅費を使用することが出来なかった。
|
今後の研究の推進方策 |
アワビ類を中心とした資料収集、貝殻構造解析と化学分析の実施
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験室でのモニターシステムを構築する予定であったが、宮城県の養殖場だけで行うことに変更し、養殖したアワビ類などの貝殻を材料として貝殻構造解析と化学分析を進める予定である。国内外を問わず、アラゴナイト・カルサイトで形成された貝殻の収集も行う予定である。
|