研究課題/領域番号 |
23740386
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中島 礼 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (00392639)
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キーワード | 生体鉱物 / 軟体動物 / 地球化学 / 古生物学 |
研究概要 |
H24年度には研究材料としてのアワビ類以外の軟体動物として、カルサイト殻を持つホタテガイ類、カルサイトとアラゴナイト殻を持つシンカイヒバリガイ類を材料として研究をすすめた。アワビ類については、東北地方の大槌と泊浜で採集された材料のほか、韓国南岸で採集されたものと中国地方瀬戸内海で養殖されているアワビ類も材料として用いた。これらのアワビ類の貝殻について は、貝殻構造解析と貝殻の化学分析を行った。貝殻構造解析については、貝殻断面をアセテートフィルムを用い観察用に加工し、実体 顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察し、貝殻に含まれるアラゴナイトやカルサイトの分布を把握した。また、軟X線による写真から、成 長密度などを見積もった。この手法のほか、今年度は新しくカルサイトとアラゴナイトを区別して染色する方法を用いて、さらに詳細にそれぞれの鉱物の分布を把握した。ほかにラマン分光法によって、ミクロン単位での精度でカルサイトとアラゴナイトの分布を測定する手法をとりいれた。ホタテガイ類については化石と現生の標本を入手し、化石を年代測定を行った上でのカルサイトの成長速度を見積もった。シンカイヒバリガイについては、貝殻断面からアセテートピール法で断面観察、そして走査型電子顕微鏡で微細構造の観察を行い、カルサイトとアラゴナイトの貝殻成長の伴う分布変化などを見積もった。ホタテガイ類やシンカイヒバリガイ類の貝殻構造は比較的シンプルであることがわかったが、アワビ類については複雑な鉱物分布をしている。これにはラマン分光法をとりいれて研究を進めることがよいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アワビ類の鉱物分布は複雑で、分析に時間がかかることから、試料とする貝殻を水槽で生育させる方法をとりやめ、養殖場などから入手して分析をすすめることに方向を転換した。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度に進めた研究手法で、アワビ類を中心に鉱物組成分布や成長過程の鉱物形成を観察、分析していく。そのほかにもカルサイトやアラゴナイトからできている貝類も材料として進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費については、アワビ類やホタテガイ類を中心とした研究材料を東北、中部、中国、九州地方の沿岸域から収集するために使用する。物品費については、貝殻構造の観察をするために、観察前の処理を行う薬品や物品、顕微鏡で観察して画像処理および構造解析をする上での装置などの物品の購入をする。外注分析費については、貝殻の化学分析や生息環境の海水の化学分析については外注で分析会社に依頼する際に使用する。また、分析機器が職場にあるものについては、機器の使用経験のある人を雇用し謝金を支払う。
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