本研究は,チタネイトの高圧高温相関係から,超高圧下におけるMgSiO3の高圧相転移やその相転移シーケンスの新たな可能性をひもとくことで,いわゆるスーパーアース(巨大惑星)深部における鉱物構成の解明に向けた重要な手がかりをつかむことを目的としている。 最終年度ではCaTiO3およびMgTiO3について検討を行った。CaTiO3については約130GPa,2500Kまで調べられた。約60GPa以上の圧力においてはCaTiO3→1/2CaO+1/2CaTi2O5へ,100GPa以上においてはCaO+TiO2への分解が確認された。MgTiO3については50GPaにおいてMgO+TiO2への分解が確認された。 これまで,高圧下におけるABO3型化合物の存在様式を議論する際,ABO3型の高圧構造もしくはAO+BO2という分解のみが想定されてきた。そして,巨大惑星深部におけるシリケイトの存在様式を議論する際にも,MgSiO3ならMgO+SiO2としての分解相のみが考慮されていた。しかしながら,チタネイトの結果からは高圧下におけるABO3型化合物の存在様式はそのように単純ではなく,かなり変化に富んでいることが明らかとなった。これらは高圧下での物質の存在様式を議論する際の重要な発見であり,理論計算では予測できなかった結果である。一方で,巨大惑星深部のようなテラパスカルという超高圧下でその主成分と考えられるシリケイトの安定性を議論するには,理論計算しかいまのところ手段はないので,本研究で新たに発見された構造をモデル計算に採用してAB2O5型,AB3O7型という化合物がシリケイトにも存在するかどうかの検証が望まれる。
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