研究課題/領域番号 |
23740395
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山田 明寛 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, グローバルCOE研究員 (00543167)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高圧中性子回折 / マグマの構造 / 含水マグマ |
研究概要 |
当該年度は、東北地震の影響により東海村の大強度陽子加速器研究施設の運転が長期間にわたり停止され、更に夏に納入予定であった六軸型高圧発生装置の据え付けも半年以上の遅れが生じた。このため中性子線を用いた実験、及び現地での高圧実験を行うことはできなかったものの、代表者の所属機関に設置されている高圧プレスを使用した予備実験によって概ね順調に高圧中性子回折実験に向けた技術開発が行われた。当該年度における技術開発の内容としては、中性子線に対して透明なZrO2圧力伝達媒体を用いた圧力発生試験とそれに関連した圧力伝達媒体サイズの最適化を行った。これによって室温では約9万気圧の圧力発生を達成するとともに、中性子回折のために十分な試料容積の確保することのできる試料部構成を考案した。また更に、この試料部構成を高温発生用のものへと発展させ、高圧下での長時間、安定的な加熱を達成するべく、その技術開発も行った。その結果、8万気圧、1230 Kを発生し、一時間以上の安定加熱を行うことができた。 J-PARCに納入される6軸型高圧発生プレスはH.23年度末、無事に当施設のビームライン(BL11)への据え付けを完了し、代表者も現地スタッフと協力してその立ち上げ、工場試験を含む試験実験に参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
J-PARCの長期間の運転停止期間においても、愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター設置のマルチアンビル型高圧発生装置を用いて、高圧中性子回折実験用6-6型加圧方式に関する技術開発に重点を置いて研究を遂行することができた。また、本研究課題のもう一つの重要な手法であるX線回折実験に関しては、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設(PF-AR)が秋より運転を再開し、それにより高圧X線構造解析に関する研究は半年強のブランク期間をおいて行うことができた。新しい6軸型高圧発生プレスに関しては、H.23年度末にJ-PARCの高圧ビームライン(BL11)に据え付けられ、試験実験等にも着手し始めた。更に、来年度に向けた実際の(高圧)中性子回折実験の内容に関しても順調に現地スタッフらと打ち合わせを重ねてきており、実際にH.24年度中の中性子回折実験のために、大強度のビームライン(BL21)にビームタイムを獲得している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はJ-PARCのBL11における六軸型高圧発生プレスを用いた実験をより本格化し、そのための立ち上げ作業を現地スタッフと協力して行い、液体、非晶質物質の高温高圧中性子回折実験のための技術開発を行う。また、非晶質の中性子回折データの取得には大強度の全散乱装置が導入されているBL21ビームラインでの測定も行い、珪酸塩ガラスの構造の精密決定に向けた実験も平行して行う。さらに、本ビームラインでは最近Paris-Edinburgh型高圧発生装置を用いた高圧下での中性子測定も行われつつあり、圧力をかけた状態での測定も試みる予定である。 放射光X線を用いた実験では、昨年度に引き続き高エネルギー加速器研究機構での実験を継続して行い、中性子回折データとの比較対象となるデータの収集にあたる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き高圧中性子回折のための技術開発を行う。特にJ-PARCでの作業を中心とした研究活動を展開する予定である。そのため、研究費は高圧実験のためのアンビルおよび6-6型加圧方式に必要なアンビルガイドフレームおよび東海村までの旅費に充当する。また、中性子回折実験には重水等の特殊な試薬が必要となるうえに、それら試料専用の試料ホルダも別途準備する必要があるため、それらの購入に充てる。更に、これらの技術開発、研究結果を随時国内外でアピールしていく予定であるため、それら会議の出席にも使用する予定である。
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