研究概要 |
本研究では、地球上最大の巨大火成岩岩石区であるオントンジャワ海台玄武岩の強親鉄性元素濃度・オスミウム同位体比の系統的データを基に、大規模火成活動に伴う強親鉄性元素濃度の挙動を理解することを目的としている。本年度はまず、前年度に研究協力者から入手した試料の記載と全岩主要・微量元素濃度に基づき試料選定を行った。従来研究により分類された4つのマグマタイプ(Kroenke, Kwaimbaita, Singallo, Low-TiO2)の存在を確認し、認められるバリエーションを網羅する50試料について新たに粉末試料を調整した。4つのマグマタイプの中で最も初生的と考えられるKroenke-type(MgO>8 wt%, Zr<45 ppm)の8試料について、前年度に最適化された分析手法を適用し、強親鉄性元素濃度を求めた。先行研究ではKroenke-typeマグマのIr, Ru, Pt, Pd濃度範囲はそれぞれ0.5-2.4 ppb, 0.9-1.5 ppb, 8.5-13.8 ppb, 11.5-24.8 ppbと比較的大きなバリエーションがあることが報告されており、一部の高濃度データを説明するためにマグマ源に金属核が混入した可能性が指摘されている。一方、本研究で得られたIr, Ru, Pt, Pd濃度範囲はそれぞれ0.09-0.17 ppb, 0.53-0.75 ppb, 6.3-9.0 ppb, 11.5-16.0 ppb と、既存データに比べて明瞭に低い傾向にあり、バリエーションも小さいことが判明した。検出限界やデータ再現性に関して、本研究で用いた手法が格段に良いことを考慮すると、既存データの強親鉄性元素濃度測定には問題があり、マグマ源の見積もりについて再考する必要がある。
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