研究課題
本研究課題では、(1) 玄武岩試料に対するオスミウム同位体比と強親鉄性元素濃度の高精度分析手法を確立し、(2)地球上最大の巨大火成岩岩石区であるオントンジャワ海台玄武岩の系統的データを取得する。その結果から、マグマ発生・ 進化における強親鉄性元素の組成変動メカニズムを理解し、大規模火成活動に伴うマントル―地殻 ―大気海洋に渡る物質/元素移動モデルを構築することを目的とした。最終年度は、(1) に関して国際学会への発表、国際誌への論文執筆、投稿、査読コメントに対する補助データ取得を行った(現在、再査読中)。また、高精度オスミウム同位体比取得の上で最も大きな障害であった「ブランク低減下」を実施し、その内容と手順を論文としてまとめ公表した。これらの結果、研究期間全体を通じて、強親鉄性元素低濃度玄武岩試料の定量分析データの再現性を格段に向上させることが出来た。また本課題で確立した手法を用いて、(2) に関して各種海洋島、海台玄武岩試料のオスミウム同位体比と強親鉄性元素濃度分析を行い、以下の新しい知見を得た。(i) 海洋底における変質作用に対する各種強親鉄性元素の移動度はそれほど高くないが、パラジウム/レニウムは地表付近の脱ガス作用により大気ー海洋系に放出されうる。 (ii) オントンジャワ海台を含むソレアイト質玄武岩は、MORBに比べて高濃度の強親鉄性元素を含有するのに対し、 海洋島に代表されるアルカリ玄武岩はMORBと比べ同程度もしくはさらに低濃度となる特徴がある。以上の観察を基にすると、大規模火成活動は効率的にマントルー地殻へ強親鉄性元素を運搬するが、通常の条件では大気ー海洋系への放出までには至らないことが考えられる。
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JAMSTEC Report of Research and Development
巻: 18 ページ: 17-28
Earth and Planetary Science Letters
巻: 377-378 ページ: 84-96
10.1016/j.epsl.2013.07.022