研究概要 |
ナノ対応プラズマ制御による原子1層2次元炭素シートの垂直配向成長と革新的応用の初年度計画に基づき以下の成果が得られた.(1) 空間を一様に加熱することが可能な電気加熱炉と誘導結合型高周波プラズマを組み合わせた, 新規プラズマ化学気相堆積(CVD)装置を製作した.(2)"原子1層2次元炭素シートの垂直配向合成"を実現するためのアプローチとして以下の二つの手法をもとに取り組んだ.2.1. 垂直配向の"多層"2次元炭素シート(カーボンナノウォール)に関して, 層数制御の観点から合成条件を最適化することにより, "単層化"の実現を試みた. 合成条件として触媒材料に着目し, 触媒としてカーボンナノチューブを利用することにより, カーボンナノウォールの合成が促進されることを見出した. さらにカーボンナノチューブを触媒とすることでカーボンナノウォールの層数が少なくなる傾向があることが判明した.2.2."水平配向"単層2次元炭素シート(グラフェン)に関して, 配向性制御の観点から合成条件を最適化し, "垂直配向"の実現を試みた. 配向制御に取り組む前段階として, 基となる水平配向炭素2次元シート(グラフェン)の高品質合成に着手した. 合成温度, プラズマ条件(電子温度, 電子密度, 基板入射イオンエネルギー)を最適化することにより, 欠陥の極めて少ない高品質なグラフェンの合成に成功した. さらに, 触媒条件を最適化することで, 通常困難とされてきた絶縁基板(シリコン酸化膜)上へのグラフェンの直接合成に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度目的としていた"原子1層2次元炭素シートの垂直配向成長"実現に向けて異なるアプローチで取り組み, 原子"数層" 2次元炭素シートの垂直配向成長, 及び原子1層2次元炭素シートの"水平"配向成長に成功している. 各アプローチで条件を最適化することで単層化, 及び垂直配向化を実現できると期待できる. また, 後者のアプローチにおいては, グラフェンの絶縁基板上への直接合成という予想以上結果も得られており, 本研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
ナノ対応プラズマ制御による原子1層2次元炭素シートの垂直配向成長と革新的応用の年次計画に基づき, 最終年度である今年度は以下の研究を行う.(1)前年度に合成した水平配向単層グラフェンに対して, 成長基板に静電バイアスを印加することにより, 成長基板表面のプラズマシース電場強度を増大させる. この効果を利用することで, 水平配向グラフェンの垂直配向化を実現する. また, 垂直配向多層カーボンナノウォールに対して, イオンフラックスを精密に制御することで, 単層化を実現する. これら二つのアプローチを駆使し, 原子1層2次元炭素シートの垂直配向(単層カーボンナノウォール)成長を実現する. (2)上記の手法により合成した物質に対して, 電気伝導特性評価を行い, 単層カーボンナノウォールの基礎物性を解明する. 具体的には, 酸化膜付きシリコン基板上にフォトリソグラフィ技術を用いて, 電界効果トランジスタのソース―ドレイン電極を配置する. この電極間に垂直配向単層カーボンナノウォールを直接合成し, 電極間を流れる電流のゲート電圧 (シリコン基板をゲート電極として用いる) 依存性を測定する. これにより, カーボンナノウォールの層数と電気特性との相関を明らかにする. また, ソース―ドレイン電流のゲート電圧に依存する傾きから算出されるキャリア移動度がどのように変化するかを明らかにし, 既存のシリコン基板表面平行方向堆積構造のグラフェ ンの特性と比較し, 単層カーボンナノウォールの優位性を明らかとする.
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