研究課題/領域番号 |
23740406
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
佐々木 徹 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (90514018)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / Warm Dense Matter / 電気伝導率 / 高密度プラズマ / パルスパワー |
研究概要 |
低温・高密度プラズマ(Warm Dense Matter)の輸送特性を明らかにするためには,輸送特性を支配する高密度プラズマ中の自由電子の定量的な評価法の確立が必要である.プラズマ中の自由電子を定量的に計測するため,パルスパワー放電を用いた定積加熱法により,交流(可視光)-直流導電率の同時計測方法を構築し,低温・高密度プラズマ中での電子衝突時間と有効電荷を同時に計測する手法を確立することが本研究の目的である.これにより,Warm Dense Matterの輸送特性への寄与を定量的に明らかにすることが期待できる. 本年度は,直流導電率の計測方法の確立と交流導電率計測方法の確立に向けて実験装置の改良を行った.これによって,銅及び金の直流導電率はこれまでの実験結果を再現することが明らかになったこと,交流導電率計測方法については,自発光分光の実験結果により波長ごとの吸収係数の概算値を計測できるようになった.一方,自発光分光から理論モデルとの比較を行う際にDrudeモデルをベースに検討を進めていたが,Drudeモデルでは記述できない自由電子の影響があることが明らかとなり,現在,他の理論モデル等を参考に有効電荷及び衝突時間の算出を進めているところである.また,本研究に関連して,低温・高密度プラズマ中の輸送特性の一つである熱伝導率の見積もり方法についても開発を行い,磁場閉じ込め核融合プラズマで利用されるタングステンダイバータの熱伝導率が半実験的に求められることが明らかとなった. これらの成果については,日本物理学会,電気学会,核融合科学研究所シンポジウム,Plasma2011,IFSA2011等関連する国内外の学会で発表を行った他,現在3編の論文を投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直流導電率の計測方法の確立と交流導電率計測方法の確立に向けて実験装置の改良を行った.これによって,銅及び金の直流導電率はこれまでの実験結果を再現することが明らかになったこと,交流導電率計測方法については,自発光分光の実験結果により波長ごとの吸収係数の概算値を計測できるようになった.一方,自発光分光から理論モデルとの比較を行う際にDrudeモデルをベースに検討を進めていたが,Drudeモデルでは記述できない自由電子の影響があることが明らかとなり,現在,他の理論モデル等を参考に有効電荷及び衝突時間の算出を進めているところである.研究費については,昨年度別申請を行った予算により,データログモジュール等の購入ができたため,本予算が予定よりも支出されなかったが,これらは,より精度の高い計測法を実現するために次年度に関連物品を購入する予定である. 本研究に関連して,低温・高密度プラズマ中の輸送特性の一つである熱伝導率の見積もり方法についても開発を行い,磁場閉じ込め核融合プラズマで利用されるタングステンダイバータの熱伝導率が半実験的に求められることが明らかとなった.これは,本手法の妥当性を示すものであり,低温・高密度プラズマ計測において新たな展開を見せる可能性を示唆している. これらの結果について,関連する学会や研究会等で成果発表を行い,また,1編の査読付き投稿論文の受理や,3編の投稿中の論文があることから,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに,直流導電率の計測方法の確立と交流導電率計測方法の確立に向けて実験装置の改良を行った.これによって,銅及び金の直流導電率はこれまでの実験結果を再現することが明らかになったこと,交流導電率計測方法については,自発光分光の実験結果により波長ごとの吸収係数の概算値を計測できるようになった.これにより,本手法の確立がほぼ見越せる状況となり,本手法の高精度化を目指す必要がある.現在の実験装置のセットアップでは,電磁波の偏光面等を考慮していないため,これらを考慮した分光エリプソメトリーの様な手法で実験を行い,交流導電率の計測の高精度化を図る必要がある.また,我々の保有しているストリークカメラのタイミングが自爆型ギャップスイッチを利用しているため広範囲の時間領域で計測ができていない.このため,これらを改善し,時間的に十分なスケールで,高精度な分光計測をおこなうことで,本手法の妥当性を明らかにし,各元素ごとの電子軌道の違いが低温・高密度プラズマの輸送特性にどのような影響を与えるのかを明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策に従い,ストリークカメラのタイミング制御と元素ごとの電子軌道の違いが低温・高密度プラズマの輸送特性にどのような影響を与えるのかを考慮する必要がある.そのため,本年度は実験装置の高精度化を図るため関連光学素子の購入と自爆型ギャップスイッチからトリガ型ギャップスイッチへの移行のための実験準備,また元素ごとの違いを明らかにするための材料購入および,サファイアキャピラリーの購入に次年度の研究費を使用する.また,関連国際学会にて招待講演の依頼があり,本手法について発信するため,国際学会参加旅費を計上する予定である.
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