研究課題/領域番号 |
23740411
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
長谷川 裕記 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60390639)
|
キーワード | プラズマ・核融合 / 計算物理 / ハイパフォーマンス・コンピューティング / 磁気圏・電離圏 / 自己組織化 |
研究概要 |
本課題では、核融合プラズマをはじめとする様々なプラズマにおいて生じる多階層現象について、連結階層アルゴリズムに基づくシミュレーションコードを開発し、それによる自己無撞着なシミュレーションをおこない、いままで解明されてこなかったそのダイナミクス、特に、微視的階層の物理が巨視的な挙動におよぼす影響など、階層間の相互作用やそれによるダイナミクスについて、新しい知見を獲得することを目指している。平成25年度は、そのような多階層プラズマ現象のなかでも、磁場閉じ込めプラズマ装置周辺部におけるプラズマコヒーレント構造(プラズマブロブ)に焦点を当て、その多階層シミュレーションを実現させるための知見を得るために、微視的な物理の観点から、3次元静電粒子シミュレーションコードを用いて、ブロブの挙動について調べた。その結果、ブロブ内部に自己無撞着な粒子フローが生じ、そのフローがらせん状の電流系を形成することを観測した。さらに、ブロブ内部において、電子の速度分布を観測したところ、正電位側(ブロブ内部にはダイポール型の電位構造が形成されている)の電子温度は、負電位側の電子温度に比して高いことがわかった。また、ブロブ内部の粒子吸収境界(ダイバータ板に相当)近傍におけるイオンの速度分布を観測したところ、正電位側のイオンのほうが、負電位側のイオンよりも強く加速されていることがわかった。また、イオン温度の異なる計算を実行したところ、イオン温度が高い場合には、ラーマー運動の効果により、ブロブ伝播の対称性が崩れることを観測した。これらの成果については、第55回アメリカ物理学会プラズマ分科会などにおいて報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、核融合プラズマをはじめとする様々なプラズマにおいて生じる多階層現象について、連結階層アルゴリズムを用いたシミュレーションコードを開発、並びに、それによる自己無撞着なシミュレーションの実現を可能にするための知見を得ることにあるが、研究三年目である平成25年度は、当初計画において、ブロブ輸送などの物理現象の定量的理解を進める段階と位置付けていた。研究実績の概要にも示したように、当該年度は、微視的な物理の観点からのシミュレーション研究により、ブロブ輸送などの多階層現象の理解が進展し、その目的は達成されつつある。これらの知見を生かした連結モデルの検討も進めており、本研究は、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題では、主に、3つの研究対象を考えているが、特に、磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送については、今後、次のように推進する予定である。本対象に関する研究については、微視的物理の観点からのシミュレーション研究が進展してきているが、その微視的物理の寄与する挙動の解明をさらに進めるためには、さらなる大規模な計算が必要である。これを実現させるため、微視的モデルコードの大規模化を継続して実施する。また、より現実に則した計算をおこなうために、粒子衝突過程のコードへの導入も進め、その定量的な理解を確かなものとしていく。さらに、これらの計算によって得られた知見に基づいて、連結モデルの検討も、順次、進めていき、核融合数値試験炉への貢献を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定では、当該年度に、物品費を用いて、可視化用計算機を導入する予定であったが、当該年度においてはシミュレーションの実行に重点を置き、また、他の支出も生じたため、当該計算機の導入を延期した。 次年度においては、当該年度分の次年度使用額と次年度支払額を合わせた物品費にて、可視化用計算機を導入し、また、旅費、その他経費を研究発表のために使用する予定である。
|