本課題では、核融合プラズマをはじめとする様々なプラズマにおいて生起する多階層複雑現象に関して、連結階層アルゴリズムなどに基づくシミュレーションコードを開発し、それによる自己無撞着なシミュレーションを実行し、いままでに解明されてこなかったその挙動、特に、微視的階層の物理が巨視的な挙動におよぼす影響など、階層間の相互作用やそれによる動的ダイナミクスについて、新たな知見を得ることを目指している。平成27年度は、前年度に引き続き、そのようなプラズマ現象のなかでも、核融合磁場閉じ込めプラズマ周辺領域などで観測されるプラズマコヒーレント構造(プラズマブロブ)に主に焦点を当て、その多階層シミュレーションを実現させるために必要な基盤を構築するために、微視的な物理の観点から、3次元静電粒子シミュレーションコードを用いて、ブロブダイナミクスについての研究をおこなった。ブロブの伝播の対象性が、粒子的な効果によって崩れる現象については、前年度までに明らかになっていたが、新たにおこなった計算を解析した結果、伝播特性が磁力線方向についても依存性を持つことを見出した。また、ブロブとは逆に、背景プラズマより密度の低いコヒーレント構造である「ホール」構造の伝播についても、コードの改良により計算できるようになり、ホール伝播のダイナミクスや、それにともなう不純物イオンの輸送などに関して研究を進めた。これらの成果については、第57回アメリカ物理学会プラズマ分科会などにおいて報告した。さらに、ブロブ中の電流系や温度構造に関する研究の成果を、Physics of Plasmas 誌において発表した。
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