金属ナノクラスター触媒は、元素毎の電子構造の違いによって多様な反応性を示すが、その電子構造と機能の相関を系統的に理解することは容易ではない。本研究では、複合金属ナノクラスターのサイズ・組成を精密に制御した合成法を確立し、原子レベルでサイズ・組成と触媒活性の関係を解明し、電子構造と反応性の相関を明らかにする。本年度新たに、マイクロ混合部のチャネル幅を15 μmまで微細化したマイクロフローリアクターを製作し、これを用いてAu-Pd合金ナノクラスターの精密合成および空気酸化触媒作用における組成効果の解明に取り組んだ。昨年度までに開発した30 μm幅に比べ、より微小なナノクラスターが生成でき、Au:Pd比90:10~20:80の全組成領域において1.1~1.7 nm程度の単分散ナノクラスターの合成が可能となった。粉末X線回折からすべての組成において均一な固溶体構造を持つことが確かめられた。サイズ・構造が均一であり、組成の異なる一連のナノクラスターを用いて、アルコールの空気酸化反応に対する触媒活性を定量的に評価した結果、1) Au100%からAu:Pd=90:10の組成において著しく活性が増加すること、2) Pdが20-40%程度の領域で活性が最大となることがわかった。X線電子分光を用いて電子状態を評価した結果、PdからAuへの電子移動が活性増大の鍵となっていること、表面にあるAu原子のみが活性サイトとなることを明らかにした。一方アルデヒド生成に対する選択性は、Au60%で最大 (80%) となった。これは、従来安息香酸生成が優位となるAuナノクラスター触媒と対照的であり、アルデヒド選択性の高いPd触媒と比べても増加していた。XPSの結果から、Auサイトの電子密度が高まるほど、アルデヒド選択性が高まることを明らかにした。
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