研究課題/領域番号 |
23750002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松岡 秀人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90414002)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高周波EPR / 光電変換 / 光合成 / 電流検出 |
研究概要 |
光合成膜蛋白は、ナノレベルで制御された複数の分子間相互作用を利用することでエネルギー生産の根幹をなす機能を実現している。本研究の目的は、光合成蛋白を対象としながら、(1)我々が所有する国内で唯一となる高時間分解高周波(95GHz)パルスESR装置を全面的に改良することで、蛋白内の光電変換に直接関わるラジカルイオン対を選択的かつ超高感度に観測し、(2)光合成初期過程における励起電子の生成および電荷分離過程について、そのダイナミクスの分子論的解明を目指すことである。本年度は、装置改良と並行して、改良後の装置性能評価を行うためのモデル化合物作成を行った。モデル化合物は、人工の光合成とも呼べる有機薄膜太陽電池を対象とし、分子キャラクタリゼーションを行った。具体的には、ポリチオフェン(P3HT, poly(3-hexylthiophene))とフラーレン誘導体(PCBM, [6,6]-phenyl C61-butyric acid methyl ester)の混合溶液を用いて、PETフィルム上にディップコート法で有機薄膜を作製した。これを120℃で0~60分間アニールした後ヨウ素蒸気に曝して、P3HT上に生成したカチオンラジカルのESR測定を行い、分子キャラクタリゼーションを行った。また、ITO基板上に同様の薄膜作成条件で太陽電池素子を作成し、光電変換特性など測定を行った。その結果、作成した太陽電池は、本研究で開発を目指している電流検出EPR装置の性能評価に適した標準試料となることが確認できた。引き続き次年度も装置の改良を続けるとともに、作成した標準試料による性能評価と、光合成蛋白への応用を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置の改良も順調に進み、性能評価をするまでに至った。また、性能評価に使用可能な標準試料の作成も完了した。しかし、震災による研究開始の遅れのため、当初の目的の一部は達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
高周波ESR分光器で用いる汎用の円筒型共振器は薄膜試料のサイズを制限するため、それを克服でき、大きなデバイス試料に対しても適用可能なファブリーペロ型共振器の作成がほぼ完了しつつある。完了した時点で、共振器の性能評価を直ちに行う。また、目的の光合成蛋白を電極で挟んだセル型構造の試料を作成し、光電流高周波EPR測定を行うとともに、光合成の分子レベルでの理解を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた光合成デバイス試料作成を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した光合成デバイス試料作成に必要な経費として平成24年度請求額とあわせて使用する予定である。
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