研究課題/領域番号 |
23750010
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
浜崎 亜富 信州大学, 理学部, 助教 (60510120)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Pulsed magnet / Chemistry / vesicle / deformation / microspectroscopy |
研究概要 |
本課題では平成23年度にパルスマグネット中で顕微分光を行うシステムの構築を行った。まず,分光用の光学系を組み立てたほか,パルスマグネットが周辺機器と同期するための回路の設計と組み立てを行った。時間的なコントロールは遅延信号発生器(Stanford Research System 社 DG645)を本予算により購入し,Interface 社製 のマルチカウンターと組み合わせて使用した。その結果,ナノ秒レーザー励起の光反応をパルス磁場中で観測することができた。ただし,検出器に一般的なPMTを用いたため,早い時間の信号を観測することが出来ず,年度をまたいでブリーダ抵抗を作成している段階である。 一方,リポソームの磁場印加による変形をハイスピードカメラで観察しようとしたが,試料台(プローブ)の振動が発生して瞬間挙動の撮影に成功しなかった。現在,プローブの材質や構造を検討し,0.1秒以下,振れ幅50um程度の振動まで低減することが出来たが,振れ幅をベシクルのサイズ以下(目標5um)まで低減させるよう,研究を進めている。なお,磁場印加前後のベシクル構造には,一部変形の兆候がみられており,振動の問題が解決すれば,その時間経過を直接観測できることになるであろう。同時に分光法による解析をする際も,振動による揺らぎを取り除くことになるため,誤差が少なくなるものと思われる。以上に挙げた問題点のクリアを目標に,当面は研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績にも記載したように,装置の振動が問題となっているが,パルス磁場中でパルス幅よりもタイムスケールの長い時間観察することは,パルスマグネットを用いた実験ではあまり前例がない。さらには直接観察など,全く前例がないことである。この問題は当初より予想されたものの一つと捉えており,研究が大幅に遅れている状況ではない。 一方で,現象の変化の観察はハイスピードカメラ,およびフォトマル(PMT)を用いた高速分光を行うことにしているが,前者の方は1200fpsでの測定でも光量が確保されたこと,PMTを用いる際にも光軸の調整が完了したことから,速やかに次の段階へと移行することが可能となっている。 以上のように振動の問題以外は確実に解決出来ているので,現在までの進捗状況はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
装置上の問題が解決し,安定して実験が出来るようになったら,蛍光物質を用いたベシクルにおける脂質膜の一分子的な拡散挙動の評価を行う。評価は蛍光退色回復(FPR)法やそれに類する顕微分光法を用いて行うので,比較的スムーズに実験は遂行できると思われる。実際,顕微分光に用いる光学系を構築し,時間分解蛍光観測を試したところ,検出系の一部に不適当な部分が見つかった以外は,そのまま実験に移行できることが試されている。 前述の振動の問題については,長期的に解決しない場合,例えば測定を1分子レベルからバルクにする(揺れに強い)等,根本的に新たな対応策を考えなければならない。その際には,当初の目的を達成できるか,充分に考えなければならない。
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次年度の研究費の使用計画 |
UV-Vis-NIR の分光光度計の購入に予算の大部分を充て,残りを消耗品と旅費に使用する。当該の研究は,分光器で単色化して挙動を追跡することになるが,測定条件等は分光光度計による評価で得られた物性を元に決定する。ただし,現在は簡易型の分光光度計しか所有していない上、近赤外領域の検出手段も持っていないので,これから超分子より幅広い視点で研究を推進するためにも準備が必要と考えている。 なお,当該年度の実験において,分光器は当初購入していたものより分解能の高いものの購入が必要と判断したが,当該年度の予算のみでは購入不可能であったので,他に購入予定であった品目の一部を校費などの別予算で支払い,必要分を次年度に繰り越した。
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