研究課題/領域番号 |
23750014
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大久保 敬 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (00379140)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | フェノール / 光電子移動 / 光触媒 / 酸素化反応 / ベンゼン / 分子状酸素 / レーザーフラッシュフォトリシス / キノリニウム |
研究概要 |
フェノールの現行製造法であるクメン法は、過酸化物を経由した多段階反応で高エネルギー消費であり、加えて低収率であるなどの問題点を抱えている。そこで、ベンゼンの直接酸化による、高効率かつ高選択的なフェノール合成プロセスの開発が切望されている。最近では固体触媒を用いた不均一系における研究が広く行われているが、未だ有用なものは見いだされていない。酸化剤としては分子状酸素を用いる事が、安価で安全性の面でも優れている。本研究では、キノリニウム誘導体の光励起状態が有する高い酸化力を利用し、均一系で水を酸素源、分子状酸素を酸化剤とするベンゼンからフェノールへの光酸素化反応が起こることを見いだし、その反応機構についても詳細に検討を行った。3-シアノ-1-メチルキノリニウム(CNQuH+) 過塩素酸塩(5.0 mM)、ベンゼン(30 mM)、水(3.0 M)を含む酸素飽和アセトニトリル溶液にλ> 290 nm のキセノンランプ光を6時間照射すると、選択率71%、収率51%でフェノールと過酸化水素が得られた。次に、水H2(16O)の代わりに、H2(18O)を用いて同様の光反応を行うと、Ph18OH が生成することから、酸素源は水であることが分かった。反応機構は、蛍光消光、レーザーフラッシュフォトリシスなどの実験により調べた。その結果、本反応のメカニズムは、まず、光電子移動が起こりベンゼンラジラカルカチオンとCNOuH・が生成した後、生成したベンゼンラジカルカチオンに水が付加し、ベンゼンOH付加体ラジカルが生成する。その一方でCNOuH・が酸素を還元しスーパーオキシドを与えその後プロトン化され生成したHO2・ がベンゼンOH付加体ラジカルから水素を引き抜き、フェノールと過酸化水素を与えることが分かった。本成果は、Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 8652に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に予定していた研究目的である、ベンゼンからフェノールへの直接酸素化についてはほぼ完了することができた。また得られた成果を研究期間内にAngew. Chem. Int. Ed. 誌に投稿し掲載された(Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 8652)。予定してた計画以上に研究が進展しているので、現在その応用研究に着手しており、ベンゼンラジカルカチオンを利用した新規光触媒反応についても新しい知見を見いだすことができ、その成果もOptics Exp 誌に掲載された。(Opt. Exp. 2012, 20, A360-A365)
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今後の研究の推進方策 |
前年度では、キノリニウムイオンの光励起状態は強力な酸化力を有していおり、ベンゼンを電子移動酸化することが出来、電子移動酸化によりベンゼンラジカルカチオンを生成させることに成功した。一方で、この電子移動生成物であるベンゼンラジカルカチオンの均一溶液中における反応性については研究例が少なく、前述した水だけではなく、種々の求核剤を使用した光触媒反応系への展開を行う。例えば、臭化水素水(HBr)を臭素源とする臭素フリーベンゼンの臭素化反応、アルコール(ROH)を使用したアルコキシル化、カルボチオレーション、アミノ化などが挙げられる。アミノ化で用いるアンモニアはカチオン性光触媒であるキノリニウムと反応し、光触媒活性を阻害する可能性が考えられるが、これまでの申請者の研究で明らかになっているテトラシアノベンゼンなどの中性光触媒の酸化力を利用することで代用可能である。 また、汎用性・光触媒の安定性を高めるために固体光触媒の開発も試みる。光触媒をゼオライトやメソポーラスシリカなどのような多孔性物質内に閉じ込めることが出来れば、反応後、生成物と光触媒を分離することが濾過のみで行うことが出来る。本研究で用いるQuH+はカチオン性であるので、ゼオライトやメソポーラスシリカ中のナトリウムイオンとカチオン交換法で容易に調整することが出来ると考えられる。特にメソポーラスシリカは様々な細孔径のものが報告されているので、光触媒、反応基質に適したものの探索についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
光触媒合成用の試薬、光触媒反応を試験するための有機試薬、溶媒、ガラス器具などの購入を計画している。また、レーザーフラッシュフォトリシス用の光学部品の購入費にも充当する予定である。
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