研究課題/領域番号 |
23750022
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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キーワード | 電子移動 / ポルフィリン / スピンダイナミクス / 磁場効果 |
研究概要 |
本研究の目的は次世代の光エレクトロニクス材料として期待されている有機色素ナノ粒子の光電子物性を、分子科学的観点から解明することである。溶液プロセスを用いて作製したポルフィリンナノ粒子の表面に酸化還元活性のあるプローブ分子を導入し、光励起に よって電荷注入を行う。電荷分離、および再結合速度の測定から、粒子内の励起子および正孔拡散過程を観測する。さらにスピンダイナミクスの観測から電子-正孔対の相互作用、ダイナミクスを抽出し、ナノ粒子の光エレクトロニクス物性と色素モノマーの化学構造との関連を明らかにする。 本年度はポルフィリンナノ粒子表面に導入するアクセプター型プローブ分子であるナフタレンビスジイミド(NDI)誘導体に関して、有機合成、精製を終え、まず有機溶媒中において亜鉛ポルフィリンモノマーとの会合実験を行った。その結果、配位結合による会合定数は数百程度であり、多量のアクセプターを添加した場合に電子移動が観測される事が分かった。次にリン酸バッファー水溶液中にてカチオン性亜鉛ポルフィリンとの会合実験を行ったところ、10の5乗オーダー以上の高効率かつ多段階の会合が観測された。また、励起一重項からの高速電子移動とそれに続く高速電荷再結合を示唆する分光学データが得られた。アクセプタープローブの置換基依存性等から本会合において配位結合ではなくクーロン力が大きな寄与を与えていることが明らかとなった。 これと並行し、アクセプター吸着型ミセルにおける電子移動反応に対する磁場効果を観測し、スピン選択性に関するメカニズムの解明を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクセプタープローブとポルフィリンモノマーとの会合および電子移動メカニズムに関する興味深い知見を得ることに成功し、水中におけるナノ粒子との会合に関する指針を得ることができた点で当初の目標に近づいている。また、新規ミセル系における磁場効果の研究も大きく進展し、ナノ構造体界面における電子移動メカニズム解明に関する知見が得られた。しかし研究代表者の所属先変更に伴い、研究遂行に遅れが生じたため、ポルフィリンナノ粒子との会合実験には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、新たな所属先において過渡吸収検出磁場効果測定装置およびサンプル循環型温度可変システムの構築を行う。構築した装置を用いてアクセプター吸着型ミセルにおける電子移動メカニズムに関してより詳細な検討を行う。また、これと並行してポルフィリンとアクセプタープローブとの水中における会合に関して、会合メカニズムの解明および超高速分光を用いた電子移動メカニズムの解明を行う。また、ポルフィリンナノ粒子の表面電荷の制御を試み、クーロン力を用いたプローブの導入の可能性を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
高感度磁場効果装置の構築のため、高安定性レーザーの導入を行う。また、有機合成、集合体作成のための消耗品、共同研究先への旅費等として研究費を使用する。
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