• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

スピン状態変化を伴う化学反応の理論的経路探索と速度論的解析

研究課題

研究課題/領域番号 23750027
研究機関分子科学研究所

研究代表者

倉重 佑輝  分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (30510242)

キーワード量子化学 / 電子状態 / 電子相関 / 多配置理論 / 励起状態 / 項間交差
研究概要

光合成系IIのMn4CaO5クラスタの水分解反応において多状態反応性の存在を明らかにした.多状態反応性とは複数の電子状態のエネルギー曲面を経由する反応のことで,より単一の電子状態のエネルギー曲面に沿った反応に比べてより活性障壁の低い経路を選択すことが可能であり,金属の高効率な触媒反応の要因の一つと考えられている.具体的には前年度に開発したspin-adaptatedな状態平均DMRG法を用いて,Mn4CaO5クラスタ内酸素移動の反応経路に沿った多状態のエネルギー曲面の計算を行い,その結果,反応経路におけるMn酸化状態の異なる電子状態同士の交差を発見した.交差点において2状態のポテンシャル面は同方向に傾斜しているため,速度論的な観点からも交差点における状態間の乗り移りは効率的に起こると考えられる.この結果は今後のMn4CaO5クラスタ水分解反応の機構解明において,常に多状態反応性を考慮した反応経路解析が必要であることを示している.
生体中の実際の構造を参照としたモデル構造の妥当性を検討するため,電子磁気共鳴実験パラメータの量子化学計算を行った.Mn4CaO5クラスタにはMnイオンの磁気カップリングのみ異なる電子状態が数十~数百cm-1という狭いエネルギー領域に多数存在すると考えられる.これらをバイアス無く最低エネルギー状態を計算するため考えられる全ての磁気カップリング状態で状態平均をとったDMRG計算を行った.その結果,各Mnサイトにおけるスピン射影の実験値との直接比較が可能になり,モデル構造のスクリーニングを行えるようになった.
以上の方法とDMRG-CASSCFの解析的微分を組み合わす事により反応機構の全容解明に対する手法が揃ったと言え,多状態反応性を持つ複雑な化学反応の経路探索と速度論的解析の確立に道筋をつけることが出来た.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] More π electrons make a difference: emergence of many radicals on graphene nanoribbons studied by ab initio DMRG theory2013

    • 著者名/発表者名
      W. Mizukami
    • 雑誌名

      Journal of Chemical Theory and Computation

      巻: 9 ページ: 401-407

    • DOI

      10.1021/ct3008974

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Extended implementation of canonical transformation theory: parallelization and a new level-shifted condition2012

    • 著者名/発表者名
      T. Yanai
    • 雑誌名

      Physical Chemistry Chemical Physics

      巻: 14 ページ: 7809-7820

    • DOI

      10.1039/c2cp23767a

    • 査読あり
  • [学会発表] 密度行列繰り込み群を基礎とする多配置電子状態理論の開発と応用

    • 著者名/発表者名
      倉重佑輝
    • 学会等名
      第6回分子科学討論会
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス(東京)
  • [学会発表] 密度行列繰り込み群を基礎とする多配置電子状態理論の開発と応用: PSII Mn4Caクラスターの構造と電子状態の検討

    • 著者名/発表者名
      倉重佑輝
    • 学会等名
      日本化学会第95回春期年会
    • 発表場所
      立命館大学草津キャンパス(滋賀)

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi