研究課題/領域番号 |
23750030
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
増田 卓也 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20466460)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 固液界面 / 光電子分光 / 燃料電池 |
研究概要 |
固液界面では、腐食、電析、電極反応などの種々の興味深い過程が起こっている。燃料電池の電極反応の効率はこれらの積み重ねによって決定されるため、各過程の理解が重要である。このような過程の詳細を理解するためには、界面の構造や電子状態の変化をその場で観察する必要がある。 X線光電子分光法(XPS)は、物質の表面組成および表面種の化学状態を非破壊かつ再現性よく分析可能な手法である。従来のXPSでは、媒質中における放出光電子の減衰を防ぐため、測定には真空が必要であった。このため、実動作環境における触媒や電気化学条件下における電極の表面状態を観察することは不可能であった。そこで本研究では、固液界面プロセスをその場観察できるXPS測定システムを開発し、燃料電池用電極の劣化過程の解明を目的としている。 初年度は、2種類のセル(マイクロ型セルとフロー型セル)の設計・開発を行うとともに、測定対象である白金電極/電解質水溶液界面(燃料電池用モデル電極界面)における構造変化について予備的理解を深めた。フロー型セルは、薄膜によってシールされた先端部を真空中に導入し、溶液をフローしながらXPS測定を行うというものであるが、溶液リークが測定系に致命的なダメージを与える可能性が示されたため、開発を断念した。一方、このような状況に備えて同時開発を進めていたマイクロ型セルは、ほぼ完成といえる状態にあり、溶液と固体表面が接触した状態での測定に成功しつつある。古典的な電気化学計測、および走査型プローブ顕微鏡などの手法によって、燃料電池用モデル電極界面に関する理解も十分深まっており、次年度は、当初の予定通り、電気化学条件下での測定に挑戦する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したとおり、あらかじめ二つの方法を立案して研究に臨んでいたことが功を奏し、一方を断念したものの、なお予定通り研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、固液界面プロセスをその場観察できるXPS測定システムを開発することと、それを燃料電池用電極の劣化過程の解明に応用することである。すでにシステムの開発には成功しつつあるので、今後は燃料電池系への展開を図る。まず電気化学系に応用可能であることを実証するために、電極表面の酸化など比較的簡単な系からスタートする。続いて、燃料電池において実際に電極として利用される白金薄膜でセルの一部をコーティングし、電解質との界面における酸化状態や吸着物質の決定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大部分は測定セルの試作・開発費に充てる。このほか、大型放射光施設(SPring-8)および高エネルギー加速器研究機構(KEK)を利用するため、1年間で5-6回程度の出張旅費(30万円)が必要である。また、当該分野での研究の主導権を握るため、国内外で学会発表を行うための旅費(30万円)を必要とする。
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