本研究では、独自に開発した混合ドナー型[OSSO]四座配位子を活用し、それを有する4族遷移金属錯体が1-ヘキセンの重合反応において、極めて高活性かつ高イソ選択的に進行する有用な触媒であることを見出している。本研究では、α-オレフィン重合における長年の課題であった高活性、高立体選択性ならびにリビング性の三点を同時に達成する究極のポストメタロセン触媒の開発を目的としている。平成23年度では、[OSSO]四座配位子を有する種々のチタン錯体や5族遷移金属錯体の合成を行い、それぞれ1-ヘキセンの重合反応を検討した。結果として、高いイソ選択性の発現を見出すことに成功したが、すでに報告している類似のジルコニウム錯体やハフニウム錯体に比べて重合活性が著しく低下することがわかった。平成24年度では[OSSO]四座配位子におけるシクロアルカン環の効果を検証するため、7員環から10員環のシクロアルカンを縮環させた[OSSO]型配位子を合成し、対応するジルコニウム錯体を触媒とした1-ヘキセンの重合反応を行った。結果として、いずれの中員環を有する[OSSO]型ジルコニウム錯体は完璧な1-ヘキセンのイソ選択的重合反応を達成し、その重合活性は従来のポストメタロセン触媒よりも高い値を示し、8員環が最も高い活性となった。 一方、[OSSO]四座配位子のフェノレート部位のオルト位に様々な置換基を有する誘導体の合成についても検討し、嵩高いアダマンチル基や種々のトリアルキルシリル基、さらにオリジナルの[OSSO]四座配位子に置換しているt-ブチル基よりも立体的に小さなフェニル基やカルバゾリル基を有する誘導体をそれぞれ開発した。今後、これらの配位子を活用し、α-オレフィンの中でも汎用性の高いプロピレンやスチレンの重合、それらの共重合をそれぞれ検討し、これまでにない精密重合を達成する触媒系の発見を目指していく。
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