研究課題/領域番号 |
23750035
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
前田 優 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10345324)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / フラーレン / 化学修飾 / 機能化 / ケイ素化 / 有機ケイ素化合物 |
研究概要 |
本研究課題では、機能性カーボンナノチューブ(SWNTs)の創製を目指して、新規な化学修飾法を開発し、SWNTsの実用化に向けた研究を推進することを目的とする。これまでに、アルキルリチウムとハロゲン化アルキルを段階的にSWNTsに反応をさせることで、SWNTsの側面化学修飾ができること。さらに用いるアルキル化剤のアルキル基に依存して化学修飾率が制御し得ることを見いだしている。2つの段階的に導入されるアルキル基の導入量比に関する情報は得られていないために、ラマンスペクトルと質量分析のそれぞれを用いた置換基導入量の評価を行い、その相関性を調査した。同一の式量を持つ様々な構造を有するアルキル基を段階的に導入し、得られたアルキル化SWNTsのラマンスペクトルの強度比と熱重量分析から見積もった置換基導入量に一次の相関が見いだされた。式量の異なるアルキル基を段階的に導入したアルキル化SWNTsの置換基導入量の評価を熱重量分析とラマンスペクトルにより行い、先に認められたこれらの相関性を用いることにより、2つの段階的に導入されるアルキル基の導入量比に関する情報を得ることができる。ハロゲン化アルキルを用いたSWNTs還元体のアルキル化反応の置換基効果について検討を行ったところ、置換基のかさ高さによって化学修飾率に差が認められ、一段階の還元的アルキル化反応においても、化学修飾率の制御がアルキル化剤のアルキル基により制御し得ることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来、SWNTsの化学修飾率の評価には、吸収スペクトルやラマンスペクトルが用いられていた。これらのスペクトル変化に基づく化学修飾率の評価に対し、熱重量分析を用いた評価では置換基とSWNTsの重量比を見積もることができるので、SWNTsに対する置換基導入量を重量比として導くことができる。例えばDDS等への利用を目的とした機能性SWNTsを創成する場合には、親媒性ならびに分子認識など複数の機能をSWNTsに導入することが求められるが、置換基の式量が異なる場合では熱重量分析によって置換基の導入量を評価することができなかった。今回、ラマンスペクトルと熱重量分析にて評価した化学修飾率の相関から、SWNTsに導入された異なる2つの置換基の導入比率を導くための知見を得ることに成功した。今回解明した化学修飾率の相関を参考とし、導入する2つの置換基の組み合せにより機能の導入比率を制御する方法論を明らかにすることが期待できる。今後の研究期間において、現在着手中であるアルキルケイ素化ならびに官能基変換が可能な部位の導入については継続して研究を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
異なる置換基を持つSWNTs誘導体を合成し、それぞれの置換基導入比率を明らかにする。さらに、SWNTsの2段階のアルキルケイ素化反応を検討し、有機ケイ素基導入率を調査する。これまでに開発したアルキル化法を有機ケイ素化へと拡張することで、効果的に研究を推進する。段階的ケイ素化反応が困難であった場合には、直接SWNTs還元体を合成し、還元体のケイ素化反応を試みる。後者の方法では、シリルリチウムなどの活性種を発生させる必要がない点で、利点がある。本法により有機ケイ素基導入率の制御ができれば、効果的なSWNTsの機能化法として利用することができる。 官能基変換に適した置換基の導入として、水酸基の導入を検討する。水酸基を有する反応試薬を直接、SWNTsに反応させることも提案がなされているが、中間体をクエンチしてしまう恐れがあるために、保護基の活用を検討し、その導入を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
ケイ素化SWNTsを合成するための反応試薬とガラス器具の購入に予算を計上している。また、活性種の検出を目的としてガスクロマトグラフィーの導入を予定している。旅費として、学会発表旅費を計上した。
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